研究課題
本研究では、レーザー生成プラズマ中で磁気リコネクションを駆動し、プラズマ発光計測で磁化プラズマ挙動の膨張と衝突の様子を、陽子ビームを用いてリコネクション磁場構造を、二方向のレーザートムソン散乱法を用いて電子・イオンの速度分布関数を計測することで、リコネクション率とプラズマ加熱・加速との関係を明らかにする。2022年度は、大型レーザーを用いた陽子ビームの計測は、施設側で採択されなかったため実施できなかったが、これまでできていなかったレーザートムソン散乱の電子項計測を試みた。結果として、スペクトルを取得するまでには至らなかったが、大型レーザーを計測用レーザーとして用いて実験を行い、実験が可能であることは示した。おそらくプラズマ密度が高いために計測用分光器の計測領域が不十分であったと考えられる。また、2021年度に取得したレーザートムソン散乱のデータを解析することで、磁場拡散領域におけるイオン速度分布の変化と、磁場からプラズマへのエネルギーを求めることに成功した。またエネルギー変化からリコネクション率を求めた。これらの結果を論文に投稿した(Phys. Rev. E, 106, 055207 (2022))。また本成果は、九州大学からプレスリリースを行なった(https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/842/)。
2: おおむね順調に進展している
レーザー生成プラズマを用いた磁気リコネクションの可視化、詳細な時間・空間分解プラズマ計測に成功し、実験データが順調に取得できている。取得したデータ解析を進め、論文化も行なった。実験手法は確立したので、今後、計測の最適化と、新たに電磁波動の計測を追加し、リコネクションによるエネルギー変換の検証を進められる。
すでに磁気リコネクションの実験手法は確立し、2方向レーザートムソン散乱計測から、電流シートの検出、アウトフロー加速、エネルギー変換を明らかにしてきた。今年度はさらに、リコネクションによる非熱的加速電子の検出と、プラズマ不安定等による電磁波動の検出を試みる。大型レーザー実験を行い、レーザートムソン散乱による電子項計測に再度挑戦する。高エネルギーレーザー自体をプローブとして用い、分光器の計測波長帯を大きく取ることで、電子の速度分布の情報を取得する。さらに実験では、多チャンネルの磁気プローブを導入し、アウトフロー領域に設置することで、磁化プラズマの磁場構造、電磁波動の励起を検証することで、リコネクションにおけるエネルギー散逸・変換をさらに検証する。大型レーザー実験とは別に、将来的に多方向でイオン分布関数を検証するため、散乱光を180度から360度と広い角度方向で検出可能なシステムを構築し、小型レーザー実験で検証を進める。粒子シミュレーションを行うことで、すでに得られた実験データ、主にイオンの速度分布関数の変化を検証する。また、数値シミュレーションからも実験における速いリコネクション率の妥当性を検証する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Physical Review Research
巻: 5 ページ: 013062
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