研究課題/領域番号 |
20H01884
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 悟 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60422078)
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研究分担者 |
田村 仁 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (20236756)
西島 元 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (30333884)
松山 成男 東北大学, 工学研究科, 教授 (70219525)
宍戸 博紀 東北大学, 工学研究科, 助教 (90827792)
柳 長門 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (70230258)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 核融合学 / 電磁・マグネット / 高温超伝導 |
研究実績の概要 |
本研究は、強磁場・照射特性を踏まえた分割型高温超伝導マグネットの建設・運用・保全シナリオの構築を行うために、1) 強磁場・照射環境を踏まえた接合特性詳細分析、2) 強磁場用超伝導センサー製作とクエンチ検出特性影響因子の解明、3) 放射化計算に基づく分割型高温超伝導マグネット保全シナリオ検討、を行うことを目的とする。本年度の研究実績は以下の通りである。 1) 強磁場・照射環境を踏まえた接合特性詳細分析:コンタクトプローブユニットを用いたREBCO線材の層間抵抗測定の高度化のために、新たな計測器の導入・信号処理法の改善を行い、層間抵抗率の磁場依存性の取得に成功した。予想に反して磁場上昇とともに層間抵抗率が上昇する結果が得られた。また、REBCO線材接合の高度化のための接合助剤(フラックス・液体金属等)の適用性検討を行った。超伝導マグネット冷却中での照射環境を模擬するために、液体窒素トラップ付きのビームチャンバーを整備した。 2) 強磁場用超伝導センサー製作とクエンチ検出特性影響因子の解明:NbTiセンサーを用いて、絶縁コイル、部分絶縁コイル、無絶縁コイルでのクエンチ検出実証を液体ヘリウム冷却、最大9 Tの磁場下にて実施した。また、強磁場用のクエンチ検出センサー設計として新たにNb3Alの構造・使用条件を明らかにした。さらに、運転温度を20 K程度に高めた状態で使用するMgB2センサーの臨界電流・機械特性の実験的調査を行った。 3) 放射化計算に基づく分割型高温超伝導マグネット保全シナリオ検討:検討のための予備計算として、分割型高温超伝導マグネットの製作、冷却、運転を踏まえた構造解析を実施した。また、中性子輸送計算、放射化計算に必要となる計算機、ソフトウェアの整備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 強磁場・照射環境を踏まえた接合特性詳細分析:層間抵抗測定法の改善について交付申請時はプローブユニットの設計変更により実現する予定だったが、計測器の導入と信号処理法の改善で解決し、予定通り磁場中での測定に成功した。また、交付申請書には記載していなかったが、接合助剤の適用により接合性能が改善することがわかったので、実施内容に加えて検討した。照射チャンバーの整備についても予定通り実施した。 2) 強磁場用超伝導センサー製作とクエンチ検出特性影響因子の解明:予定通り、MgB2センサーの準備を進めるとともに、予定になかったNb3Alセンサーの検討も新たに始めた。予定していたMgB2センサーを用いてのクエンチ検出実験には着手できていないが、予定していなかった各種コイルの検出実験をNbTiセンサーを使って実施し、今後、MgB2、Nb3Alセンサーでの検出実験に向けた準備を進めることができた。 3) 放射化計算に基づく分割型高温超伝導マグネット保全シナリオ検討:放射化計算に着手する予定であったが、計算環境の整備までとなった。次年度には計算に着手できる見込みである。 1)、2)、3)を総合的に見れば、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
1) 強磁場・照射環境を踏まえた接合特性詳細分析:各種REBCO線材の層間抵抗の磁場依存性を評価し、層間の超伝導電子の挙動等を踏まえて、層間抵抗発生メカニズムの解明に取り組む。加えて磁場方向を変更した測定体系の構築に着手する。また、線材接合の最適化のために引き続き接合助剤の検討に取り組むとともに、改善された接合の機械的特性の取得も行う。さらに初年度に整備した照射チャンバーを用いて、冷却しながらREBCO線材に陽子線照射し、続けて同線材の臨界電流、層間抵抗の評価を行う。 2) 強磁場用超伝導センサー製作とクエンチ検出特性影響因子の解明:MgB2、Nb3Alセンサーを製作し、前者はガスヘリウム冷却体系、後者は液体ヘリウム冷却体系において、磁場下でクエンチ検出試験を行う。 3) 放射化計算に基づく分割型高温超伝導マグネット保全シナリオ検討:分割型マグネットを採用している炉設計(ヘリカル炉FFHR-d1)などを事例に、中性子輸送計算、構造材料の放射化・照射欠陥計算を行う。
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