酸素プラズマを免疫細胞に照射した場合に観測された細胞数の増加と免疫機能の促進または抑制に関して,以下の項目を遂行した. 【T細胞の酸素プラズマ感受機構,および増殖・活性制御メカニズムの解明】 〈活性酸素感受メカニズム〉市販のT細胞活性化試薬と大気圧酸素プラズマをそれぞれT細胞に作用させ,細胞の活性化(細胞数の増加)を調べた.その結果,酸素プラズマはT細胞活性化試薬と同様な細胞活性化効果があることが分かった.T細胞表面のある種のCDが酸素プラズマレセプターとして活性酸素が結合する可能性が考えられる. 〈細胞活性化(増殖)メカニズム〉酸素プラズマによるT細胞数増加の機構を明らかにするために,マイクロアレイを用いてプラズマ照射前後のT細胞の遺伝子発現変動をPCR法により調べた.MAPK経路,エネルギー産生,細胞周期等に関する遺伝子をターゲットとして,タンパク質をリン酸化する反応を触媒する酵素をコードする遺伝子の発現量を測定した結果,MAPK経路のうちERK,ERK1/2といった細胞増殖促進を誘導するタンパク質のリン酸化が促進されていることが明らかとなった.従って,酸化ストレスを感受するASK1,MAPK経路に沿って酸素プラズマによるシグナルが細胞内部に伝達されると考えられる. 【酸素プラズマによるT細胞の分化特性】 ナイーブCD4+T細胞に酸素プラズマを照射することでT細胞の分化促進を調べた.T細胞が放出するサイトカイン(IL-4およびINF-γ)の量を酸素プラズマの照射時間を変えて測定した結果,いずれの照射条件においてもGATA結合タンパク質3(GATA3)の発現増加が生じてIL-4放出量が増加し,INF-γの放出は減少することが明らかとなった.従って,酸素プラズマの照射によりCD4+T細胞は,他の免疫細胞に免疫応答の活性化と維持をもたらすTh2細胞へ分化することが明らかとなった.
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