研究課題/領域番号 |
20H01893
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
古閑 一憲 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (90315127)
|
研究分担者 |
朽津 和幸 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 教授 (50211884)
石橋 勇志 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50611571)
奥村 賢直 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (60801149)
Attri Pankaj 九州大学, プラズマナノ界面工学センター, 准教授 (40868361)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | プラズマ農業 / 低温プラズマ / 活性酸素窒素種 / エピジェネティクス / 遺伝子発現 / 電子スピン共鳴分光 / 休眠状態 |
研究実績の概要 |
「プラズマ照射に最適な種子の生理状態は何か」を明らかにするため、プラズマ照射に対する種子の応答の分子メカニズムの解明を目的とした本研究では、カイワレ、シロイヌナズナ、イネの種子を主な対象として、プラズマ照射から種子への吸収、植物内応答の結果としての発芽・成長過程の変化までを一貫して評価する。研究遂行にあたり、設定した課題は、1)種子への照射量(吸収量)の定量、2)種子に対する磁場・電場の印加効果、3)プラズマ照射による種子の生理状態変動評価である。1年目にあたる2020年度に得た成果を以下に示す。 研究項目1)プラズマ粒子の選択照射と照射量定量:電子スピン共鳴分光計測を用いて、プラズマ照射した種子のラジカル量の変化を明らかにした。従来明らかであった、フェノール分子に関連するセミキノンラジカル量のプラズマ照射による変動とともに、液体窒素を用いた低温計測により、Fe(3)イオンが照射時間と正相関することを明らかにした。それぞれのラジカルの生成反応は、関連する分子が違うことが予想され、より詳細な検討により、プラズマ生成粒子による種子内化学反応を明らかにする可能性を持つ。また調湿による種子内の休眠状態の変動がプラズマ照射効果を変動することを明らかにした。 研究項目2)種子への磁場・電場印加効果の検討:静磁場下での実験システムの立ち上げを行った。 研究項目3)プラズマに対する種子の生理状態変化:親世代に高温ストレスかで登熟したイネ種子は発芽特性が悪いことが分かっている。この種子へのプラズマ照射により発芽特性が改善することを明らかにした。また発芽関連遺伝子の発現解析と、発芽関連遺伝子のメチル化レベル評価から、植物内生理による発芽特性の改善というよりもむしろ、メチレーションレベルの変動によるエピジェネティックな変動が発芽改善に関与していることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
プラズマ照射量の定量については電子スピン共鳴分光計測を用いてプラズマ照射による種子内化学反応評価が可能であることに示唆を得た。またプラズマ照射による生理状態変化については、種子の休眠状態をプラズマ照射により変動することを明らかにした。以上の2点に加えて、プラズマ照射によるエピジェネティックな変動が見られたことは計画以上の成果であり、進捗状況を「当初の計画以上に進展している」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
プラズマ照射に対する種子の応答の分子メカニズムの解明を目的とした本研究の2年目の研究推進方策は以下の通りである。 研究項目1)プラズマ粒子の選択照射と照射量定量:2年目は、現有の密閉型プラズマ照射装置を用いたKI-starch法やpH計測によるRONS照射量の評価を継続するとともに、その他、試薬やGC/MSを用いた定量について検討する。 研究項目2)種子への磁場・電場印加効果の検討:2年目は、磁場の効果について静磁場下での実験を行うとともに、これに、ナノ秒パルス電圧印加を加えプラズマ照射する。 研究項目3)プラズマに対する種子の生理状態変化:種子内の生理状態を評価するにあたって、本研究では、種子内のROS量、植物ホルモン量、ビタミンなどの疎水性分子に着目する。研究項目1)に関連して1年目に明らかにした調湿による効果について、表現型との相関を調べるとともに、種子内生理状態との相関を明らかにするため、種子内ラジカル量変動や種子内ホルモン量と照射条件、発芽率などの表現型の相関を定量的に明らかにする。
|