研究課題
「プラズマ照射に最適な種子の生理状態は何か」を明らかにするため、プラズマ照射に対する種子の応答の分子メカニズムの解明を目的とした本研究では、カイワレ、シロイヌナズナ、イネ、レタス、オオムギの種子を主な対象として、プラズマ照射から種子への吸収、植物内応答の結果としての発芽・成長過程の変化までを一貫して評価する。研究遂行にあたり、設定した課題は、1)種子への照射量(吸収量)の定量、2)種子に対する磁場・電場の印加効果、3)プラズマ照射による種子の生理状態変動評価である。2年目にあたる2021年度に得た結果を以下に示す。研究項目1)種子への照射量(吸収量)の定量:九州大学で種子照射に用いているスケーラブル誘電体バリア放電(SDBD)装置から種子照射位置における電場強度、光子量、硝酸イオン、過酸化水素量を、ポッケルスセル、分光器、試薬を用いて計測することに成功した。この結果は、SDBDから生体への照射量を定量することにより、定量的なプラズマ照射の効果についての検討を可能にするものである。研究項目2)種子に対する磁場・電場の印加効果:強磁場下での種子内ラジカル量の評価を行うとともに、項目1で記したパルス電場の強度の定量評価に成功した。研究項目3)プラズマ照射による種子の生理状態変動評価:プラズマ照射に対する植物ホルモン量の液体クロマトグラフィー/トリプル質量分析器を用いた、種子内植物ホルモン量を簡単な前処理で定量可能とした。
1: 当初の計画以上に進展している
プラズマ照射量の定量については、SDBDプラズマ源における照射量定量成功は、今後、プラズマ照射量から植物の表現型に至るメカニズムの解明を定量的に議論できる重要な成果であり、来年度以降の研究の発展が期待できる。加えて、昨年度新たに得られたプラズマ照射によるエピジェネティクス変動についても、着実に実験がすすんでいる。以上の結果は、計画以上の成果であり、進捗状況を「当初の計画以上に進展している」とした。
プラズマ照射に対する種子の応答の分子メカニズムの解明を目的とした本研究の3年目の研究推進方策は以下の通りである。研究項目1)プラズマ粒子の選択照射と照射量定量:プラズマの選択照射と表現型の相関検討。2年目に明らかにしたSDBDからのプラズマ照射は、電場、光、活性酸素窒素種が同時に照射されている。3年目は、九大で使用しているDBDプラズマ源とサンプルの間に紙、ガラス、金網などをいれることで選択照射を可能とし、各粒子のドーズ量に対する、発芽・成長特性との相関を明らかにする。研究項目2)種子への磁場・電場印加効果の検討:2年目は、強磁場下での種子内ラジカル密度評価を行った。3年目は電子スピン共鳴分光法で使用している静磁場源にジェット型のプラズマ照射装置を設置してプラズマ照射実験を行い、磁場の影響を明らかにする。研究項目3)プラズマに対する種子の生理状態変化:種子内の生理状態を評価するにあたって、本研究では、種子内のROS量、植物ホルモン量、ビタミンなどの疎水性分子に着目する。上述した評価項目について調湿による種子内水分量とプラズマ照射の効果について照射条件、発芽率などの表現型の相関を定量的に明らかにすることで、oxydative windowの観点からのプラズマ照射効果について検討する。。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Agronomy
巻: 12 ページ: 482~482
10.3390/agronomy12020482
RSC Advances
巻: 11 ページ: 28521~28529
10.1039/D1RA04441A
http://plasma.ed.kyushu-u.ac.jp/index.html