研究課題/領域番号 |
20H01909
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡辺 寛子 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 助教 (70633527)
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研究分担者 |
上木 賢太 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 副主任研究員 (40646353)
荒木 英一郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震津波予測研究開発センター), グループリーダー (60359130)
許 正憲 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 研究プラットフォーム運用開発部門, 特任上席研究員 (70359123)
阿部 なつ江 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 研究プラットフォーム運用開発部門, 主任研究員 (80302933)
笠谷 貴史 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(海底資源センター), グループリーダー (90373456)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地球ニュートリノ / 地球内放射化熱 / 海洋底検出器 |
研究実績の概要 |
地球内放射性物質起源の地球ニュートリノは、地球の根本的な謎に関わる地球内放射性物質の全体量を直接観測することができる唯一の手段である。マントル事象直接観測という大型研究への発展を目指す本研究は、ニュートリノ観測・海洋底実験・地球科学的知見と多岐に渡る研究手法を用いるため、素粒子物理学・ 地球科学・海洋工学の異分野に跨る6名の研究者によって進められた。本年度は、海洋底ニュートリノ観測機実現に向けた検出器要素の開発と検出器シミュレーションによるバックグラウンドの見積もりと検出感度の導出を行った。 海洋底地球ニュートリノ検出器は、ミューオン由来のバックグラウンドを低減するために 3-5 km 程度の深海に設置する必要がある。海水による数十 MPaという高圧に加え2-4°Cの低い海水温という現行検出器とは全く異なる環境で安定的に稼働する検出器要素の開発が必須である。低温下での液体シンチレータ(LS)の性能評価を行うため、温度コントロール下で発光量測定を行う装置を自作し、4度での発光量が常温に比べて7%発光量が上昇することと、LS構成物質と混合比の最適化を行った。また、低温下でのLSの透過率測定を行うことで、温度が透過率に影響を及ぼさないことを実測した。低放射性物質量のPMTの球形耐水圧シールドの開発として、海洋実験で使用実績の豊富なガラスに比べ、更に2 桁-3 桁ほど低い放射性物質量であるアクリルで球形シールドを製作し、その使用可能性を確かめた。JAMSTEC の高水圧実験装置を用い実際に 40MPa の高圧をかけて強度のテストを行い、アクリルの厚さと半球同士のはめ込み方法の違いによる影響を実測した。アクリルの素材としての耐圧強度は 73-120MPa である事から 40MPa では破壊されないと予想していたが、全て破壊され、その後の強度計算により赤道部分への応力集中が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低温化での液体シンチレーターの性能評価を完了し、要求性能を満たすことが確認された。また、光電子増倍管の耐水圧シールドはより低放射性物質量のアクリルは強度が足りないことが実験によってしめされることで、これまでに低放射性物質化に成功しているガラスによる耐水圧シールドを使用することを決定できる結果となった。新型コロナウィルス蔓延による計画変更もあったものの、オンラインツールを活用することなどによる進捗を継続できた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに低温・高圧環境での各検出器要素の開発を行い、使用に耐えうることを実測によって確認してきた。今後は検出器要素を組み合わせ、小型プロトタイプ検出器の制作に反映させると共に、研究成果発信によるコミュニティ形成を行っていく。
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