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2021 年度 実績報告書

ニュートリノ振動実験の精密化を実現する前置水チェレンコフ検出器の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20H01912
研究機関東京工業大学

研究代表者

久世 正弘  東京工業大学, 理学院, 教授 (00225153)

研究分担者 鈴木 州  神戸大学, 理学研究科, 助教 (20243298)
石塚 正基  東京理科大学, 理工学部物理学科, 教授 (40533196)
西村 康宏  慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (40648119)
石田 卓  大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 講師 (70290856)
角野 秀一  東京都立大学, 理学研究科, 教授 (70376698)
HARTZ MARK  東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 准教授 (70721702)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードニュートリノ / 水チェレンコフ検出器 / ハイパーカミオカンデ / J-PARC / IWCD
研究実績の概要

・今年度は、東大カブリIPMU、東京理科大学、慶應大学に製作した試験用セットアップにより、マルチPMTに使用する候補の8cm径PMTの性能評価試験を行った。性能評価試験では、PMTにレーザー光源からの光を照射し、時間分解能や検出効率の測定を行なった。また、低エネルギー事象の測定に重要な暗電流の測定や、実験の環境を想定した磁場中での性能評価など、幅広い測定を行なった。測定においては、アフターパルスと呼ばれる、実際の信号の後に発生するノイズが確認されたが、製造元との協議により構造を見直し、改善に成功した。また、東京工業大学や東京理科大学で用意した解析サーバにより、測定結果に基づくシミュレーションを作成し、水チェレンコフ検出器によるニュートリノの測定に対する影響を評価し、要求性能を満たすことを確認した。
これらの測定結果をもとに、共同研究者で議論し、マルチPMTに使用するPMTを決定した。マルチPMTの開発は国際共同研究で進めているが、その基幹要素であるPMTの性能評価および選定においては、本科研費による研究成果が重要な役割を果たしている。
・本研究課題では、すでに専門家を交えて中間距離水チェレンコフ検出器の基幹技術である水槽の上下機構を検討し、ケーブルの巻き取り、ポンプによる水の汲み上げ、水槽の位置制御およびモニターの概念設計を完成させている。今年度は、これらの検討結果と、海外の研究機関による他の検出器要素の設計を組み合わせ、検出器全体の設計に着手した。本研究の成果として、従来はワイヤーによる位置制御システムを検討していたが、よりコンパクトなピン留め方式による位置制御システムを採用することにより、他の機器類の配置場所に自由度が増し、より柔軟な設計が可能となっている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定していたPMTの性能評価は順調に進み、本研究の成果により実験でマルチPMTに使用するPMTを選定することができた。各大学の大学院生により、測定とシミュレーションの両面から幅広く研究を進めることができている。毎週のミーティングで進捗報告と意見交換を行うことにより着実に研究を進め、日本物理学会や研究会でも大学院生を中心に研究成果を発信している。
CERNで予定しているビームテストや海外との連携で行う回路類の評価試験はコロナの影響で遅れているが、回路の設計も概ね完成し、ビームテストも2024年に実施する計画が準備を進めている。
特に国際共同研究の部分でコロナによる遅れもあるが、全体としておおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

すでに候補のPMTを選定しているが、引き続き性能評価を進め、大量生産の前に問題点がないかを検証する。具体的には、PMT内部の放電による発光がないことを検証する。このような放電による発光は他の実験で確認され、問題となった例があるため、同様の問題が発生している場合は、大量生産の前に対策が必要である。また、個体差や長期安定性なども検討項目として挙げられている。
また、完成したマルチPMTおよび内蔵するエレクトロニクスの性能評価を行う。日本でも試験用にマルチPMTを製造し、レーザー光源を用いて基本的な特性の測定を行う。測定と同じ環境をシミュレーションで再現し、応答を比較することでゲルやケースを含むマルチPMTとしての性能を評価する。
中間距離水チェレンコフ検出器の実験施設については、これまでの専門家による検討結果を元に、研究グループで協議して全体の設計を完成し、仕様書にまとめる。

備考

木下達志「ハイパーカミオカンデ長基線ニュートリノ振動実験における中間距離水チェレンコフ検出器の研究開発」東京理科大学2021年度修士論文

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)

  • [国際共同研究] TRIUMF(カナダ)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      TRIUMF
  • [国際共同研究] INFN Napoli(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      INFN Napoli
  • [雑誌論文] Performance evaluation of 3 inch PMT for Hyper-Kamiokande2022

    • 著者名/発表者名
      T. Kinoshita
    • 雑誌名

      J. Phys.: Conf. Ser.

      巻: 2156 ページ: 012191

    • DOI

      10.1088/1742-6596/2156/1/012191

  • [雑誌論文] Evaluation of event reconstruction with small-scale water Cherenkov detectors2022

    • 著者名/発表者名
      K. Yamauchi
    • 雑誌名

      J. Phys.: Conf. Ser.

      巻: 2156 ページ: 012199

    • DOI

      10.1088/1742-6596/2156/1/012199

  • [学会発表] ハイパーカミオカンデ光検出精度向上のための8 cm径光電子増倍管の評価2022

    • 著者名/発表者名
      佐々木 鳳杜
    • 学会等名
      新学術領域「ニュートリノで拓く素粒子と宇宙」研究会
  • [学会発表] A 50 ton Water Cherenkov Light Test Platform in a Charged Particle Test Beam2021

    • 著者名/発表者名
      M. Hartz
    • 学会等名
      Snowmass IF9 Test and Calibration Beams and Irradiation Facilities Workshop
    • 国際学会
  • [学会発表] An Intermediate Water Cherenkov Detector for Hyper-Kamiokande Using the NuPRISM Concept2021

    • 著者名/発表者名
      M. Hartz
    • 学会等名
      The European Physical Society Conference on High Energy Physics (EPS-HEP)
    • 国際学会
  • [学会発表] Performance evaluation of 3-inch PMT for Hyper-Kamiokande (Poster)2021

    • 著者名/発表者名
      T. Kinoshita
    • 学会等名
      17th International Conference on Topics in Astroparticle and Underground Physics
    • 国際学会
  • [学会発表] 小型水チェレンコフ検出器における事象再構成の性能評価2021

    • 著者名/発表者名
      山内航輝
    • 学会等名
      日本物理学会
  • [学会発表] マルチPMTに使用する3インチPMTの性能評価および水チェレンコフ検出器における測定性能への影響2021

    • 著者名/発表者名
      木下達志
    • 学会等名
      日本物理学会

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公開日: 2023-12-25  

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