研究課題/領域番号 |
20H01915
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
六條 宏紀 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特任助教 (00725814)
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研究分担者 |
伊代野 淳 岡山理科大学, 理学部, 教授 (10211757)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ガンマ線天文学 / 宇宙線 / 気球実験 / 暗黒物質 / 高エネルギー天文学 / イメージング / 原子核乾板 / 飛跡検出器 |
研究実績の概要 |
コロナ禍の影響によりJAXA豪州気球実験は2023年3月へ再延期となった。これを受けて、本番実験に向けた原子核乾板の量産計画を延期し、名古屋大学の新しい原子核乾板ファシリティで製作した原子核乾板の性能を確かめるため、コンバーター(本番サイズ25x50cm^2の原子核乾板50枚積層)を乗鞍山頂へと運び大気ガンマ線を観測するリハーサル実験を実行した。回収後の原子核乾板は本番のリハーサルを兼ねて岐阜大学ダブルハイパー核実験棟の大規模現像設備を用いて現像を行なった。 現像後の原子核乾板を自動飛跡読取装置によって飛跡データを取得し、実験要求を満たす高い検出効率(95%以上)を確認した。前回実験の電子対生成反応選出処理を用いて約30000事象の電子対生成反応を検出し、反応位置、入射角度、エネルギーを決定した。乗鞍山頂での大気ガンマ線フラックスを導出し、シミュレーション(EXPACS)との良い一致を確認し、次期実験に使用する原子核乾板がガンマ線測定器として正常に機能することをリハーサル+解析を通じて確かめた。 電子対飛跡の精密測定システム開発を行なった。電子対生成反応点直下の銀粒子の座標を高解像カメラによって高精度に測定し、ガンマ線の角度を原理限界に迫る精度で決定する。2018年実験のフライト乾板を用いて原理実証を行なった論文はPTEP誌に受理され、EDITOR'S CHOICE および日本物理学会Hot Topics に選出された。 全長5m与圧容器ゴンドラの極低温環境試験を実施した。静岡県焼津市にある日本で唯一マイナス60度に急速冷却が可能な冷凍マグロコンテナを会社のご厚意でお借りした。加圧状態の与圧容器ゴンドラは-60度環境(気球実験深夜帯の環境に相当)においても常温時と遜色のない圧力保持性能を持つことを示し、次期実験では24時間以上の長時間フライトが可能であることを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本番実験用に立ち上げた新しい原子核乾板ファシリティで計画通り原子核乾板の量産が行える体制を整えた。テスト製造した乾板を用いて実施したリハーサル実験で高い性能を確認し、電子対生成反応の選出にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響によりJAXA豪州気球実験は2023年3月へ再延期となった。本番実験に向けた原子核乾板の量産は2023年5月より開始する。
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