研究課題/領域番号 |
20H01917
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
毛受 弘彰 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 助教 (10447849)
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研究分担者 |
伊藤 好孝 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (50272521)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | LHC加速器 / ハドロン相互作用 / カロリーメータ |
研究実績の概要 |
2022年9月にLHC加速器を用いた陽子-陽子衝突測定を無事に完了することができた。当初の予定では、検出器キャリブレーションのためのSPS加速器を用いたビームテスト実験を本研究の1年目(2020年度)に実施予定していたが、コロナによる計画遅延によって、2021年度に測定データを限定して実施し、LHCでの測定が完了後の10月に検出器をそのままSPS加速器にもっていって再度ビームテスト実験を実施した。2022年は海外渡航制限などによる実験参加者の制限が緩和されたことによって、日本グループから5名、イタリアの共同研究者も5名が参加し、十分な人員体制で実施することができた。そのため、当初の計画通り24時間シフト体制での1週間のビームタイムをフルに活用してデータ取得を行うことができた。このビームテスト実験は、検出器のエネルギースケールのキャリブレーションを高精度で行うために、検出器全体の温度の時間変化1℃以下にコントロールして測定環境を一定に保った状態で行った。加速器は運転停止がほとんどなく非常にスムースであり、100-250GeV/cの電子ビームと350GeV/cの陽子ビームを検出器に位置をかえながら入射して検出器の応答を測定した。スムースにデータ取得が行えたことで、当初の予定にはなかった検出器背面からのビーム照射による測定も実施することができ、検出器の後方層のキャリブレーション精度の向上が期待できる。この結果の解析を現在進めており、陽子-陽子衝突測定のデータ解析にキャリブレーションデータとして用いる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナの影響によって大幅な計画変更が余儀なくされた。本研究では、スイスのCERN研究所にあるLHC加速器を用いて研究を行うが、その運転スケジュールがコロナの影響によって大きく変更された。その影響をうけて、当初の予定より測定の実施が1年以上の遅延が生じ、また大幅な計画の変更を余儀なくされた。現在は、キャリブレーション用のビームテストのデータ、LHC陽子陽子衝突測定のデータがすべて揃った状態であり、遅れを取り戻すために急ピッチでデータ解析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
LHC陽子陽子衝突測定のデータの解析を進める。 取得データ総数は、3億事象にもおよぶ。このデータからη中間子、K0s中間子、Λバリオンの候補事象を選別して解析していく。K0sとΛ事象については1つのカロリーメータ検出器に複数の粒子が入射した事象からエネルギーや入射位置をそれぞれ再構成する必要がある。シミュレーションを用いた再構成手法の開発はこれまでに行われているが、実際のデータのノイズ状況やバックグラウンドを考慮した最終調整を行い、これらを選択事象に対して解析を進めていく。
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