研究実績の概要 |
東北大学電子光理学研究センターでは低エネルギー電子散乱による陽子電荷半径測定実験を進めている。本実験では陽子電荷半径を決定するために、ポリエチレン(CH2)を標的として陽子・電子散乱断面積を測定する。断面積が精度良く知られている電子・炭素弾性散乱と電子・陽子弾性散乱を同時に測定することで、その比から電子・陽子散乱断面積の絶対値を高精度で決定する。 ポリエチレンは電子ビームを照射していると電子ビームによって水素がはじき出されて水素が減少し、実験中に水素/炭素の標的数比が変化することが知られている。本実験では電子・水素と電子・炭素散乱の相対測定を行う都合上、水素/炭素標的数比を 0.1% 以下の精度で実験中モニターし続ける必要がある。そのモニターに使用する電磁スペクトロメータの検出器開発を行った。 検出器としてはシリコンストリップ検出器を検討した。当初はそれぞれ x,y 方向の二枚のシリコンストリップ検出器を想定していたが、実験室でビームを使用したコミッショニングを実施し、想定以上にバックグラウンドとなるガンマ線が多いことが分かった。実験室床の耐荷重の問題からシールドの増強が困難なため、ガンマ線への耐性を高めるために x,x,y からなる三層のシリコンストリップ検出器を採用することとした。半導体不足によって検出器の読み出し回路の製作が大幅に遅れたためまだ制作の完了には至っていないが、2023年度中には製作、試験を経て本実験に投入する予定である。
|