研究課題/領域番号 |
20H01926
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永尾 翔 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30781710)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ハイパー核 / ストレンジネス / 高精度実験 |
研究実績の概要 |
本研究は、近年、重イオン衝突実験によって報告が続いているハイパー三重水素核の束縛エネルギーと寿命の測定結果が現在の理論的フレームワークでは統一的に理解できない問題(ハイパートライトンパズル)に対して、全く別のアプローチからハイパー三重水素の測定を行い、問題解明をはかるものである。 本研究で実施を目指している実験は、ドイツ・マインツ大学にある連続電子線加速器MAMIを用いた「ハイパー核崩壊パイ中間子分光によるハイパー三重水素核の質量分光」と東北大学電子光理学研究センターELPHにある電子シンクロトロンを用いた「(γ,K+)反応によるハイパー三重水素核の寿命測定」である。 MAMIにおける崩壊パイ中間子分光は、物理データの収集を終えてデータの解析段階にある。ハイパー四重水素核の観測に成功し、正しくデータ収集ができていることを確認できた。さらにデータ解析を進めることで、ハイパー三重水素核の観測が期待される。最終的な結果を得るには、実験で利用した磁気スペクトロメータの運動量較正が必須である。COVID-19の影響により、較正実験の実施が遅れていたが、運動量較正に必要な標的、電子ビームエネルギー測定の準備を行うことができた。2024年3月下旬より電子原子核弾性散乱を利用したスペクトロメータ較正を進めている。 ELPHにおける寿命測定は、測定に必要な検出器の整備を進めることができた。当初の予定とは異なり、入射ガンマ線のエネルギー、時刻を測定する光子標識化装置の放射線損傷が確認され、アップグレードが必要であったが、無事に完了させることができた。ガンマ線のプロファイルを行う検出器もストリーミング型DAQを導入することで、要求性能をはるかに凌駕する結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、「ドイツ・マインツ大学におけるハイパー三重水素の高精度質量分光」「東北大学電子光理学研究センターにおけるハイパー三重水素の寿命測定」を実施予定である。 マインツ大学での質量分光実験は、既に物理データの収集に成功しており、現在解析を進めている。この実験では測定に用いた磁気スペクトロメータ(Spek-A, C)の精密な較正が必須である。較正ソースとして、電子ビームが標的原子核に衝突、散乱されて出てくる散乱電子を用いる。必要な電子ビームのエネルギー測定、標的の製作を進めることができたものの、加速器運転や他の実験との調整が難航し、較正データの収集実験の実施が後ろに遅れてしまった。2024年3月よりデータ収集を開始しており、計画よりやや遅れているが、研究に必要な項目を進めることができた。 ELPHにおける寿命測定は、検出器に必要な機器(ケーブルコネクタ)の手配が困難な時期が生じたため、準備が当初予定より遅れてしまったが、必要物品の手配に目途をつけ、量産を開始することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き研究計画で実施予定であるMAMIでの質量分光とELPHでの寿命測定を進める。 MAMIでは、引き続きスペクトロメータ較正に必要なデータ収集を行う。2024年5月頃に必要なデータ収集を完了し、2024年中にデータ解析を通したスペクトロメータ較正に目途を付ける予定である。ハイパー三重水素核のデータ解析も並行して進める。最終的には研究計画通り、世界最高精度のもとハイパー核質量を決定することができるであろう。 ELPHでは、寿命測定に必要な検出器の量産が2024年7月頃に完了する見込みである。検出器群の設置作業、物理データ収集を開始する見込みである。
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