研究実績の概要 |
自然界に存在する豊かな物質は、多様な「相」により生み出されており、その発現機構を探るのは物質科学の重要な目的の一つである。このような例のうち、原子核の核子対凝縮では、発現すれば現れるはずの2種類の素励起モードのうち、1つが実験的に確立していないという根本的な問題を抱えている。本研究の目的は、残る1つのモードである「対振動」の存在を確定することである。 本研究目的のためには対振動モードを高効率で励起させる優れた反応プローブが必須である。このようなプローブとして(4He,6He)反応に着目した。この反応を用いると、6He内の中性子対の弱束縛性により反応の際の運動学条件を向上させ、従来の(p,t)反応よりも対振動に対して高い感度を持たせることが可能となる。これまでの東北大CYRICでの120Snの(4He,6He)反応の実験により、励起エネルギー13MeV付近に従来の反応では見えなかった高励起対振動モードの候補を発見した。 しかし、これを確定するためにはより前方角度のデータが必須である。そこで本年度は、阪大RCNPにて、Grand Raidenスペクトロメータを使用して前方角度領域を測定するための実験を遂行した。前方角度では弾性散乱による背景事象が問題であったが、弾性散乱を効率的に止めるストッパーなどを導入することでうまく背景事象を減らし、目的の反応イベントを測定することに成功した。データ解析の結果、励起エネルギー5MeV付近に強い対振動モードのピークを発見したとともに、高励起領域10MeV以降では対振動モードが連続成分として存在している可能性を見出した。
|