研究課題/領域番号 |
20H01930
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松田 恭幸 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70321817)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CPT対称性 / 反陽子 / 減速膜 / 反水素 |
研究実績の概要 |
これまでにない高効率で高頻度の超低速反陽子ビームを生成することで、反水素原子の基底状態の超微細構造の高精度分光を行うことが本研究の目的である。この測定を行う CERN 研究所のAD(反陽子減速蓄積器)では、新たな減速冷却リングである ELENA が建設されており、この ELENA から供給されるこれまでよりも低いエネルギーで質の高い反陽子ビームを効率よく取り込むための新たな減速装置の設計・制作と、その設置、チューニングが2020年度の目標であった。 Covid-19 の感染拡大の影響を受け、作成した減速装置を実際に設置してチューニングを行う時期が見通せなくなったため、必須である物品等は購入しつつ、減速装置の設計・制作を少し遅らせる必要が生じた。コンパクトで信頼度が高い減速膜方式と、効率が高いが装置の大きさが大きくなるために設置上の困難を伴うドリフトチューブ方式の両方についての設計をすすめ、設置上の困難を解決する目途がたったため、ドリフトチューブ方式を採用することとして制作を行った。残念ながら 2020年度中にはビームを用いて試験することができなかったが、2021年度のビームタイムにおいて制作した減速器を用いて ELENA から供給されるビームを高効率で蓄積することに成功した。 また、コロナ対応のために実験装置のリモート制御を可能とするための改良をすすめ、(物理的な作業を除いて)データ収集を日本から行うことができる体制を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ELENA からの反陽子の減速については制作したドリフトチューブ型の減速器について期待通りの性能を発揮することが確認された。今後、さらなるチューニングによって性能向上を図る。 バックアップとして、減速膜を用いた減速装置についても製作は終わっており、万が一のトラブルにも対応できる体制が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
ELENA の運転開始を受けて、2022年度は5月上旬から12月までという長期間にわたって現地で研究を行うことができる体制が整った。(海外を含む)他の共同研究者が獲得した資金をもとにしたマイクロ波印可装置等の開発も進んでおり、高精度の反水素分光を行う準備が整いつつある。すでに博士課程学生1名が現地に滞在してデータ収集を進めているが、今後、実験が本格化するタイミングで現地に渡航し、分光実験を行う。また、渡航できない期間中もこれまでに整備したリモート制御装置を用いて日本からビームタイムに参加し、有効にビームを使って成果を出す予定である。
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