研究課題/領域番号 |
20H01935
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
森野 雄平 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (50715240)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 原子核(実験) |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、陽子ビーム-原子核標的衝突において後方に生成されるJ/\psiを測定することにより、核子中のチャーム対を含んだ5クォーク状態の存在を実験的に実証、評価する事である。J/\psi測定はJ-PARC 高運動量ビームラインの30GeV陽子ビームとJ-PARC E16実験の検出器群を用い、E16実験と共存する形で行う。 昨年度においては、J-PARC E16実験の最初のコミッショニングランがおこなわれた。それに寄生する形で本研究の推進において必要となるトリガーレートの電磁カロリメータ閾値依存性といった基礎的なデータを取得した。また、検出器ヒット特にトリガーを作るようなバックグランド源の理解、およびその低減策等の検討を進めた。 本研究においては、J/\psi崩壊由来電子対の運動量(主に2~5GeV/c)に対しE16検出器の電磁カロリメーターの厚さが充分でないため、電子識別のデータ校正には特に注意が必要となる。これに対処するため、E16実験の電子識別モジュールと、高運動量電子に対して識別能力の保証された電子識別モジュールをセットとした検出器群を構築し、電子識別校正用のデータの取得に取り組んだ。J-PARC E16実験のコミッショニングランにおいて本実験のアクセプタンス外にこの検出器群を設置し、本科研費により作成したホドスコープを用いる事で検出器群に入射する粒子の運動量の決定を可能とし、データ収集を開始した。このデータ収集は加速器故障により中断してしまったので続きは今年度に行う事となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
J-PARC主加速器の重故障により2-3月期に予定されていたJ-PARC E16実験のコミッショニングランが中断してしまい、昨年度に完了するはずであった電磁カロリメーターに関するデータ収集が今年度に持ち越しとなっている。バックグラウンド推定のためのstudy runも今年度に持ち越しとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、まず昨年度から持ち越しとなっているコミッショニングランを完遂する事が目下の課題である。これにより検出器性能の基礎データを確定し、バックグランドや検出器、トリガーレート等をシミュレーションではなく実測データに基づいた評価を可能とする。上記の評価に基づいて、本研究のJ/\psi測定用の実験標的の追加し、かつバックグランドの更なる低減を可能とするために、標的チェンバーの改造を行う。 これまでのコミッショニングランの結果より、バックグランド源は標的チェンバー以外にもかなり存在する事が判明しているので、その低減策を検討し順次実行を行う。 コミッショニングランで得られる検出器性能や読出モジュールの実績、およびバックグラウンドの特徴に基づいてtrigger boardに必要とされる性能をまとめ、論理を考案し制作に取り組む。これらが本年度に行う予定の研究計画である。 それ以降も引き続きJ-PARC E16実験と共存する形で、本研究用の短期データ取得を可能とするためトリガーモジュールの開発やトリガー信号の改良、バックグランド低減策をを行っていく。
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