J-PARCで実施する計画のミューオン電子転換過程探索実験(COMET)は10^-16以下の分岐比感度を目指しており、この達成には世界最大級大強度パルスミューオンビームの実現および最適化が必須である。最適化には専用のビーム診断が必要不可欠であり、そのための高分解能検出器開発を進めている。しかし、これまでにない大強度ビームであるが故、取得ビームレート最適化のためのジオメトリ構築、検出器の放射線耐性の確保、粒子識別手法の確立が課題となっている。この確立に向け、(1)ヒットレート低減のためのビームブロッカー開発、(2)信号処理システムの耐放射線化、(3)粒子識別手法の改良の3つの研究を並行して進めた。 (1)については、ビームブロッカーにより検出器のヒットレートを2桁以上下げる必要がある。引き続きシミュレーションスタディを進め、ブロッカーのデザインを進めた。デザインとコストを考慮し、プロトタイプ製作前にビームを用いた材料依存性を調べることを考え、その検討を進めた。 (2)については、昨年度判明した読み出しシステムにおけるガンマ線に対する問題を踏まえ、実機再デザインまで進めていたが、世界的な半導体不足により製作までは進められなかった。この解消を待つと共に、制御部のデザインを進めた。 (3)については、シミュレーションスタディにより、既存の検出器群に加え、新たなファイバー検出器を導入すると識別効率が向上することがわかっていた。実際の設置における検討を進め、概ね設置案については決定できた。一方で、ファイバーを追加せずに既存の検出器群のビームライン最上流部をうまく利用することでも効率を十分向上できる可能性が出てきたため、その検討も進めた。
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