研究課題
爆発的な宇宙嵐が発生すると、地球大気から流出した酸素イオンがエネルギーを得て(加速や加熱を受けて)、磁気圏全体のダ イナミクスに 大きく影響を与える。このプロセスには、大規模な磁気圏磁場構造の変化(磁場双極子化)が重要な役割を担っていると考えられているが、酸 素のような重い粒子の描像は未解明な点が多い。本研究では、磁気圏尾部を中心に飛翔する複数衛星のデータ解析とグローバル磁気流体モデル内での粒子追跡計算を組み合わせることで、「磁場双極子化に伴う酸素イオンの選択的な高圧化」のメカニズムを明らかにする。また、主要イオン種である水素イオンと酸素イオンに加えて、異なる質量や電荷を持つイオンの振る舞いにも着目することで、「内部磁気圏酸素圧の増強に影響を与える磁場双極子化の時間空間スケールの定量的評価」にチャレンジする。本年度は、あらせ衛星で得られたデータを用いて、内部磁気圏のうち磁気圏尾部に近い領域において、異なる5つの粒子種(H+, He++, He+, O++, O+)についてエネルギースペクトルの時間変動を複数の磁気嵐について調査した。電荷が同じで質量が異なるイオン種を比較すると、より重いイオンが多くのエネルギーを得ていることが明らかになった。質量が同じで電荷が異なるイオン種を比較すると、より電荷が小さいイオンが多くのエネルギーを得ていることが明らかになった。また、この粒子種選択的エネルギー増加(高圧化)が非熱的イオンの生成ではなくイオン温度増加に起因することが示された。この高圧化現象は磁場双極子化に伴って発生することが考えられ、重イオンが非断熱加速を受けながら効率的に捕捉される輸送システムが存在していることを示唆している。本成果は、国際学会誌 Journal of Geophysical Research Space Physicsに出版された。
2: おおむね順調に進展している
「研究業績の概要」で述べたように、地球内部磁気圏に注入されるプラズマは、質量が大きく電荷が小さいイオンが選択的にエネルギーを取得していることが示された。これは、「磁場双極子化に伴う酸素イオンの選択的な高圧化」を引き起こすメカニズムの重要な特性の一つである。来年度以降、あらせ衛星を用いた統計解析や、MMS衛星やVan Allen Probes衛星との同時観測イベントの解析をさらに進める。
今後は、磁気嵐よりも短い時間変動、特に磁場双極子化が実際に発生している時間帯に着目し、イオン高エネルギー化の特性を統計的に調査する。並行して実施している粒子追跡計算の結果と合わせ、高圧化のイオン質量および電荷依存を引き起こすメカニズムを調査する。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
Journal of Geophysical Research: Space Physics
巻: 127 ページ: -
10.1029/2021JA029786
Astrophys. J.
巻: 151 ページ: -
10.3847/1538-4357/ac2dfc
巻: 126 ページ: -
10.1029/2020JA029095
10.1029/2020JA029091
10.1029/2021JA029109