研究分担者 |
齊藤 慎司 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所宇宙環境研究室, 研究員 (60528165)
加藤 雄人 東北大学, 理学研究科, 教授 (60378982)
松田 昇也 金沢大学, 電子情報通信学系, 准教授 (20772213)
栗田 怜 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (90785495)
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研究実績の概要 |
地球周辺の高度1,000 kmから40,000 km付近の宇宙空間には、放射線帯(ヴァン・アレン帯)と呼ばれる高いエネルギーを持つ荷電粒子群が存在する。放射線帯に存在する電子群は、太陽からのプラズマ流(太陽風)の変化に応じて、その数が大きく増減する。「あらせ」衛星などによる新しい観測によって、非線形のプラズマ波動が電子の散乱や加速を引き起こし、放射線帯の電子の数が変化している様子が観測されてきた。しかし、衛星の観測データは衛星周辺の様子のみを計測するため、プラズマ波動が放射線帯の電子群全体に及ぼす影響はわかっていない。本研究では、「あらせ」衛星の発見による高周波コーラス(UBC)による急激な電子加速とバタフライ分布と呼ばれるピッチ角分布の形成に注目し、その過程を「あらせ」衛星データを入力とするデータ駆動型シミュレーションで検証した。その結果、phase trappingと呼ばれる非線形波動粒子相互作用が生じること、その結果、電子のエネルギーとピッチ角が短い時間に大きくなり急激な加速が起こること、そして、バタフライ分布が生成されることを明らかにした。この結果は、「あらせ」衛星が観測した非線形波動粒子相互作用のメカニズムを特定するのものであり、Saito, Kurita, Miyoshi et al.[2021, Geophys,. Res. Lett.]として報告された。そのほか、非線形波動粒子相互作用に関わるシミュレーション研究、ならびにマクロな内部磁気圏シミュレーションと「あらせ」衛星との比較研究等を行い、国内外の学会で報告や論文報告(Kumar, Miyoshi et al., 2021, J. Geophys. Res.)を行った。さらに、波動と粒子のエネルギー交換過程の実証にも成功した(Shoji, Miyoshi et al., 2021, Sci. Rep).
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