研究課題/領域番号 |
20H01962
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
西山 尚典 国立極地研究所, 先端研究推進系, 助教 (00704876)
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研究分担者 |
土屋 史紀 東北大学, 理学研究科, 教授 (10302077)
鍵谷 将人 東北大学, 理学研究科, 助教 (30436076)
津田 卓雄 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (90444421)
岩佐 祐希 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (90838947)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 短波長赤外 / オーロラ / 大気光 / 分光 / 大型レーダー / 北極環境 |
研究実績の概要 |
2022年11月に短波長赤外(1.1-1.3μm)に感度を持つ高分散分光器を,ロングイヤビエンのThe Kjell Henriksen Observatory (KHO)の光学ドームへの設置を完了した.また,分光観測の補完のため波長1.1μm における単色カメラも分光器と同じドームに設置・観測を開始している.設置終了後から,2023年3月末現在で大きなデータ欠測なく運用しており,分光器は2023年5月初頭,カメラは2023年4月初頭まで観測継続予定である.また,2023年1月22日および23日にはEISCAT Svalbard radar (ESR)の特別実験を実施し,光学機器との同時観測を行った.分光器は観測波長と波長分解能の異なる4つのモードを有しており,3つのモードにおいてオーロラ発光を合計10例程度観測することに成功している. 2023年1月21日の観測では,18:45UT前後にオーロラの活動度が上昇し,分光器の高分散モードによって時間分解能30秒で非常に強いN2+分子イオンのMeinel(0,0)バンドの発光が検出された.発光強度は最大で40kRを超えており,イメージャーで撮像されたバンド状のオーロラ発光の時間発展や絶対強度と整合的である.短波長赤外オーロラにおける分光及び単色イメージングの同時観測例は今まで無く,現在初期結果として論文執筆中である. 2022年11月24日の観測では,OH大気光の(7,4)及び(8,5)バンドに加えて,O2のIRバンド(1.27 um)をのスペクトルを高いS/Nで検出し,この晩では,1晩平均温度の推定における観測誤差がOH(7,4) で 16.5K 程度,OH(8,5) で 2.0K程度であった.OH(8,5)バンドについては,10分の時間分解能で5K程度の誤差で温度導出が可能であることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで開発・試験してきた分光器および単色カメラのKHOへの設置が完了し,無事に観測を開始できた.世界で初めて波長1.1 umのN2+分子イオンオーロラの分光およびイメージングによる同時観測を達成するなど,高品質のデータを順調に取得できている.
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今後の研究の推進方策 |
今後はESR同時観測イベントに着目し,発光プロセスに未解明な点が多いN2+分子イオンの1.1 um帯オーロラの発光高度や降下粒子のエネルギー分布を定量的に推定する.分光器のデータにおける薄明時の背景光の除去手法を確立させ,薄明時/日照時のオーロラ検出に取り組む.また,オーロラ発光スペクトルにN2+分子イオンの回転運動に起因する微細構造が確認できているため,理論モデルとの比較からN2+分子イオンの回転温度の導出に取り組み,オーロラ発光高度における大気温度の導出やジュール加熱の寄与について議論を進める予定である.
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