研究課題/領域番号 |
20H01966
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森本 真司 東北大学, 理学研究科, 教授 (30270424)
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研究分担者 |
青木 周司 東北大学, 理学研究科, 学術研究員 (00183129)
後藤 大輔 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (10626386)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 温室効果気体 / 物質循環 / メタン / 同位体比 |
研究実績の概要 |
大気中のメタン(CH4)は、二酸化炭素(CO2)に次いで重要な温室効果気体であることからその動態が注目されているが、CH4の生成消滅過程が非常に複雑であるために濃度変動の原因がまだ十分に解明されていない。 本研究では、北半球高緯度域・北極域、南極昭和基地、そして北太平洋・西太平洋域における系統的なCH4濃度観測と、CH4放出源に関する情報を持つ CH4の炭素・水素同位体比の高精度観測を実施・強化し、両極域から赤道域を含む全球でのCH4濃度・同位体比の変動を明らかにする。そして、 観測された広域のCH4濃度・同位体比のトレンド解析と大気モデルを用いたCH4収支に関する解析を行い、大気中CH4濃度の変動に寄与 した放出源と気候変化への応答に関する知見を得ることを目的とする。 本年度は、まず、東北大学に設置されているCH4水素同位体比分析用の連続フロー式ガスクロマトグラフ熱分解炉質量分析計(GC-P-IRMS)の整備と改修に着手した。外部制御系と多試料導入ユニットを新たに開発して現有GC-P-IRMSシステムに接続し、大気試料の半自動連続分析を可能にしたことにより、同位体比分析の省力化に成功した。同様のシステムをさらに一式製作して動作と性能確認実験を行い、翌年度のCH4炭素同位体比分析システムへの導入に備えた。北太平洋・西太平洋域および南極昭和基地での系統的な大気採取を行い、得られた大気試料のCH4濃度及びCH4炭素・水素同位体比の分析によってそれらの時空間変動を明らかにした。また、これまでに観測したCH4同位体比データとの整合性を維持・確認するために、同位体比スケールの確認実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで人手と時間を要していたCH4水素同位体比の分析システムについて、当初計画通りの改修と改造を行うことで、分析精度を維持したまま半自動化を達成した。さらに、世界各地で定期的に採取した大気試料について、CH4濃度と同位体比の高精度時系列観測を遅滞なく分析するためのフローを確立した。 新型コロナウイルスの蔓延による国際物流の停滞から、北半球高緯度域・北極域で採取された大気試料の国内への輸送が遅延しているが、現地対応者との交渉により、近日中に日本に輸送される目処が立った。このような輸送困難によって北極大気試料の分析に遅れが生じているが、現在進行中の分析システムの半自動化・自動化によって、来年度以降十分に回復可能である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に製作したCH4炭素同位体比分析システム用の外部制御系と多試料導入ユニットを、国立極地研究所に設置されているシステムに設置し、CH4炭素同位体比分析についても半自動化と省力化を図るとともに、水素同位体比、炭素同位体比分析システムの分析シーケンスを最適化し、単位時間あたりの大気試料分析数を増加させる。さらに分析システムの高度化を計り、人手を要しない自動分析システムの確立を目指す。世界各地で採取された大気試料のCH4濃度及び同位体比の高精度分析を継続して、それらの時空間変動を明らかにすると共に、昨年度遅延していた北極域の大気試料についても高精度観測を開始し、全球でのCH4濃度及び同位体比の変動を明らかにする。
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