研究課題
大気中のメタン(CH4)は二酸化炭素に次いで重要な温室効果気体であり、より確実なCH4濃度の将来予測を行うためには、その変動メカニズムの解明が急務である。しかしCH4の生成消滅過程が非常に複雑であることから、CH4濃度の変動原因は十分に理解されていない。本研究では、北半球高緯度域、南極昭和基地、そして北太平洋・西太平洋域における系統的なCH4濃度観測と、CH4放出源に関する情報を持つCH4の炭素・水素同位体比の高精度観測を維持・強化し、全球でのCH4濃度・同位体比の変動を明らかにする。さらに広域で観測されたCH4濃度・同位体比のトレンド解析と大気モデルを用いたCH4収支解析を行い、大気中CH4濃度の変動に寄与した放出源変動に関する知見を得ることを目的とする。本年度は、北太平洋域、西太平洋域、南極昭和基地、そして北半球高緯度域で定期的に採取されている大気試料分析を継続し、大気中のCH4濃度とCH4の炭素・水素同位体比の高精度時系列データをさらに1年分延長した。これまでに得られた北極域から南極域までのCH4濃度及びCH4同位体比の全球時系列データを解析し、それらの季節変化及び経年変化についての解析と、大気輸送モデルを用いたCH4各放出源の寄与の導出を行った。CH4濃度と炭素・水素同位体比の季節変化成分に関する解析から南緯30-38度から南極地域では、OHに加えてClラジカルとの消滅反応も季節変化に影響していることが示唆された。大気輸送モデルを用いて、昭和基地で観測されたCH4の炭素・水素同位体比を再現するように調節したCH4放出量は、インベントリとして提案されているCH4放出量よりも化石燃料及びバイオマス燃焼起源放出量の割合が多く、微生物起源放出量の割合が少ないこと、そして、2013年以降のCH4濃度増加には微生物起源のCH4放出量増加が寄与していることが明らかになった。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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