研究課題
本研究は、実海域において、うねりの存在が、風波の発達、並びに波浪による表層乱流の生成、に及ぼす影響の実態解明と定式化を目的とする。当該年度は、以下の研究項目を実施した。まず、研究対象とする岩手県大槌湾内において波浪と表層乱流を同時計測可能な高周波超音波流速計 (高周波ADCP; Signature1000/Nortek社) を新たに納入した。そして、湾内で測深調査並びに漁具等の設置状況の目視調査を実施し、高周波ADCPを係留・設置するために最適な場所を選定した。次に、大槌湾内の蓬莱島桟橋に常設・運用中のプロペラ式風速計の傍に3軸超音波風速計 (CYG-81000/Young社) を新たに設置し、海上風乱流の連続計測を開始した。そして、大槌湾の有限水深波を対象とした第3世代の波浪推算モデルを新たに開発して、既往の観測データと比較して、エネルギー入出力項の調整を行った。モデルは、湾内の波浪において、沖合から伝播して来るうねりが卓越する特徴を正確に再現した。加えて、湾口部の海岸地形の影響によるうねりの回折、湾内海底地形の影響によるうねりの屈折といった浅海域に特徴的な現象も正確に再現しており、うねりの影響を定式化するという目的を達成する上で十分な精度を有することを確認した。特に重要な点として、湾内波浪のうねり成分の再現には、研究代表者が効率的な計算法を開発した非線形エネルギー相互作用の計算精度が重要であることが分かった。
3: やや遅れている
新型コロナウィルス感染拡大防止のため、東京大学大気海洋研究所による共同利用研究が差し止められていたことにより、湾内が比較的静穏な夏期の環境で観測機器の試験ができなかった。そのため、当初計画していた、高周波ADCPによる波浪と表層乱流の同時観測が実施できなかった。
当該年度に実施できなかった高周波ADCPによる波浪と表層乱流の同時観測については、本稿作成時点において東京大学大気海洋研究所による共同利用研究が実施可能なため、新型コロナウィルスの感染状況が悪化しない限り実現できる見込みである。実現できない場合は、観測の準備は進めつつも、数値実験を中心として研究を進める。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
ICES Journal of Marine Science
巻: 77 ページ: 2669-2680
10.1093/icesjms/fsaa130
http://lmr.aori.u-tokyo.ac.jp/feog/kosei/