研究課題
本研究は、実海域において、うねりの存在が、風波の発達、並びに波浪による表層乱流の生成、に及ぼす影響の実態解明と定式化を目的とする。当該年度は、以下の研究項目を実施した。まず、研究対象とする岩手県大槌湾内において昨年度に探索した赤浜沖の観測場所で、6月から9月にかけて、波浪と海洋表層乱流を同時計測可能な高周波超音波流速計 (高周波ADCP;Signature1000/Nortek社) を係留設置して連続観測を実施した。次に、大槌湾内の蓬莱島桟橋に昨年度に設置して運用中の3軸超音波風速計 (CYG-81000/Young社) を使用し、海上風乱流の連続観測を継続して実施した。そして、大槌湾内の有限水深波を対象とし、昨年度にエネルギー入出力項の調整を行った第3世代の波浪推算モデルで2012年~2016年の湾内波浪の再現実験を行った。このモデル出力と既往の湾内係留点における波浪ブイによる観測データを比較したところ、微風で波高が比較的低くまた、風によるエネルギー入力と砕波散逸が無視できる程度に小さく、加えて放射伝播項が小さい期間は、観測による波浪の2次元エネルギースペクトルの局所的な時間変化が4波共鳴相互作用による非線形エネルギー伝達とよく一致していた。波浪の変動に対する4波共鳴相互作用の妥当性を実海域における2次元スペクトルの高精度な観測で実証した。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、高周波ADCPによる波浪と表層乱流の同時観測が当初の予定通り実施できない期間があったが、データの解析は順調に推移し、全体としては、研究がおおむね順調に進展した。
次年度は、夏季と冬季に高周波超音波流速計を湾内に係留設置して連続観測を実施し、本年度に実施した夏季の観測データと合わせて解析を行い、取りまとめを行う計画である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)
Progress in Oceanography
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