研究課題
本研究は、実海域において、うねりの存在が、風波の発達、並びに波浪による表層乱流の生成、に及ぼす影響の実態解明を目的とする。当該年度は、以下の研究項目を実施した。まず、研究対象とする岩手県大槌湾内の赤浜沖において、3月~6月、8月~11月にかけて、波浪と海洋表層乱流を同時計測可能な高周波超音波流速計を係留設置して連続観測を実施した。次に、大槌湾内の蓬莱島桟橋に一昨年度に設置して運用中の3軸超音波風速計を使用し、海上風乱流の連続観測を継続して実施した。そして、大槌湾内の有限水深波を対象とし、一昨年度にエネルギー入出力項の調整を行った第3世代の波浪推算モデルで2012年~2016年の湾内波浪の再現実験を行った。観測データの予備解析から、沖合から湾内に伝播して来たうねりの波向に対して風が同方向 (順風) と逆方向 (逆風) の場合に分けて、うねりが風波の発達に与える影響を調べた。解析では、うねりが風波の発達に与える影響度を、順風と逆風の双方の場合について、期間中にうねりの波形勾配が最小の時の風波のエネルギーを基準として、その基準値に対する比で見積もった。なお、風波のエネルギーは重力加速度と摩擦速度を使って無次元化・規格化を行った。うねりが風波の発達に与える影響度は順風の場合も逆風の場合も概して1を下回り、うねりの存在によって、うねりの無い場合に比べて風波の発達が抑制されることが分かった。現実の海洋においては、うねりの上で発達する風波の発達が、うねりの伝播方向と風向に関係なく抑制される可能性が高いことが明らかとなった。この結果は従来の理論研究の結論と整合的であった。ただし、逆風時では吹送距離が長くなると、逆に、うねりの存在が風波の発達を促進させる可能性も示唆された。順風時と逆風時でうねりが風波の発達に及ぼす影響が異なる要因については現時点では不明であり、解明は今後の課題である。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023 2022 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)
Regional Studies in Marine Science
巻: 63 ページ: 102964
10.1016/j.rsma.2023.102964
Nature Communications
巻: 13 ページ: 5298
10.1038/s41467-022-33019-z
AQUACULTURE, FISH and FISHERIES
巻: 2 ページ: 179-188
10.1002/aff2.39
http://lmr.aori.u-tokyo.ac.jp/feog/kosei/