研究課題
交付申請時に記載した2020年度の実施計画において2つの課題を設定した。それぞれの課題について、研究実績概要は次の通りである。課題1 北太平洋東部「海洋熱波」に伴う亜表層の水温・塩分異常の生成過程の解明 :Argoフロートによる水温・塩分格子化データを用いて、「海洋熱波」の海洋深部への持続と浸透、及び海面と海洋亜表層での水温・塩分偏差(平年値からのずれ)について詳細な解析を行った。その結果、2013-15 年に東部北太平洋で発生した表層昇温の痕跡が spiciness と呼ばれる互いに密度補償する水温・塩分偏差として海洋亜表層で持続していることを明らかにした。さらに海面から潜る塩分偏差と、亜表層を西から東へ伝播する塩分偏差の合流が、亜表層の spiciness形成と「熱波」の持続にとって重要であったことを明らかにした。課題2「海洋熱波」の下流域及び大気への影響評価:「海洋熱波」に伴う東部北太平洋域における高海面水温偏差が、大気循環に及ぼす影響を調べるために、全球大気大循環モデルを用いた大規模アンサンブル数値実験を実行した。2014年冬季の海面水温を境界条件として与えた実験結果と平年の海面水温を与えた実験結果を比較することにより、持続する海洋「熱波」からの大気へのフィードバックが、そもそも「熱波」をもたらした大気循環偏差(太平洋東部における高気圧性循環)の複数年の持続に寄与している可能性を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
交付申請時に設定した、それぞれ海洋と大気のプロセスに関する2つの課題について、概ね計画通りに研究を進めることができた。また、本研究課題と密接に関連する北太平洋における海洋変動のメカニズムやその予測可能性、およびその大気影響について、研究代表者・分担者が主著または共著となる8本の査読付き論文を出版した。
COVID-19の感染拡大により、海外研究協力者との共同研究を実施するために今年度予定していた海外出張は取りやめざるを得なかった。次年度は、海外研究協力者とのオンラインの研究議論を重ねることで共同研究を推進する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)
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