研究課題/領域番号 |
20H01972
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
森本 昭彦 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (80301323)
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研究分担者 |
郭 新宇 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (10322273)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 豊後水道 / 底入り潮 / 栄養塩供給 |
研究実績の概要 |
四国と九州の間に位置する豊後水道では、夏季を中心に低温で栄養塩濃度の高い水塊が太平洋の中層から豊後水道の底層へと進入する底入り潮という現象がみられる。この現象の存在は1990年代より報告があり、発生の特徴や豊後水道沖を流れる黒潮の挙動と関係していることが示されているが、発生メカニズムについてはほとんど分かっていない。2020年度は底入り潮の発生メカニズムの解明のため、豊後水道の4測点に海底設置式超音波多層流速計を係留することと、数値モデルで再現された底入り潮の力学バランスを明らかにすることを目的に研究を実施した。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い観測機器の係留を予定していた航海が中止となったため、小型の船で係留できる2測点にのみ流速計を係留した。さらに、2020年度はこれまでになく黒潮が豊後水道から離岸していたため、例年10回程度発生する底入り潮が一度も発生しなかった。そのため、底入り潮発生時のデータを取得できなかった。しかしながら、黒潮の豊後水道への接岸が底入り潮発生の必要条件であることが分かった。一方、数値モデル解析からは、底入り潮発生時の低温水塊の豊後水道への進入経路を調べほとんどの底入り潮において豊後水道南東海域から進入することが分かった。さらに底入り潮発生の1つのケースとして2016年9月に発生した底入り潮に注目しその発生力学を検討した。このケースにおいては、急潮と呼ばれる黒潮系暖水の豊後水道への進入現象により暖水が亜表層へ供給されたことにより豊後水道底層での圧力が低下し、その結果南北圧力勾配力の傾圧成分が小さくなり豊後水道底層へ陸棚斜面付近の冷水が進入することで底入り潮が発生したことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概要で述べたように、新型コロナウイルスの感染拡大のため予定していた大型船舶での観測機器係留航海が中止となり、計画していた4測点中2測点にしか観測機器を係留することができなかった。さらに、1995年から2019年まで毎年発生していた底入り潮が、2020年は一度も発生しなかったため、底入り潮発生時のデータを取得することができなかった。しかしながら、過去の観測データと数値モデル解析から2016年9月に発生した底入り潮の力学バランスの変化を明らかにすることができた。また、数値モデル内で見られた他の底入り潮についても力学バランスの変化を調べた。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の所属部局が所有する小型の調査実習船ですべての観測機器を豊後水道に係留できるように改良し、2020年度に実施できなかった海底設置式超音波多層流速計の係留と、7,8月に流速計係留点を含む断面において8日間の繰り返し観測を実施することで、観測データから底入り潮発生時の力学バランスの変化を明らかにする。 2002年~2019年の数値モデル結果から、モデル内で発生した底入り潮すべてについてその力学バランスの変化を調べ、モデル内での底入り潮の発生メカニズムを明らかにする。 1995年から現在までの多層水温計データや愛媛県が実施した海洋観測データを使い、底入り潮の発生回数や強度の経年変化や発生強度の季節性、底入り潮発生時の水塊構造や流動場の分布を調べ、底入り潮の基本的な特徴を再度確認する。
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