四国と九州の間に位置する豊後水道では、夏季を中心に低温で栄養塩濃度の高い水塊が太平洋の中層から豊後水道の底層へと進入する底入り潮という現象がみられる。また、瀬戸内海の栄養塩の多くが太平洋を起源とすることが過去の研究で指摘されている。底入り潮により豊後水道内へ供給された栄養塩が、瀬戸内海の栄養塩全体に占める割合と、豊後水道から流入した栄養塩が瀬戸内海のどこまで分布するのかを調べるため3次元物理―低次生態系結合モデルを開発した。このモデルにより太平洋起源、河川起源、底質起源の栄養塩の追跡計算を行った結果、瀬戸内海全体に存在する栄養塩に占める各起源の栄養塩は、太平洋起源が61%、河川起源が25%、底質起源が14%であることを明らかにした。また、豊後水道から流入した栄養塩は燧灘まで到達し、燧灘の全栄養塩に占める豊後水道から流入した栄養塩の割合は約40%であることを明らかにした。
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