研究課題/領域番号 |
20H01976
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
高谷 康太郎 京都産業大学, 理学部, 教授 (60392966)
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研究分担者 |
木下 武也 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(大気海洋相互作用研究プログラム), 研究員 (20648638)
菅野 湧貴 一般財団法人電力中央研究所, 環境科学研究所, 主任研究員 (10826978)
山崎 哲 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(アプリケーションラボ), 研究員 (20633887)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 対流圏・成層圏力学結合 / ブリューワ・ドブソン循環 / 全球アンサンブル再解析データセット / 寒気流出経路 |
研究実績の概要 |
研究代表者の高谷は、対流圏・成層圏力学結合の研究の一環として、2019/2020年冬季の東アジアの異常暖冬のメカニズムについて共同研究を行った。高谷はデータ解析の力学的議論の部分を担当し、今後の対流圏・成層圏結合の研究に向けて重大な知見を得た。現在、本研究成果をまとめた論文を執筆中である。 研究分担者の木下は、ブリューワ・ドブソン循環の変動がもたらすオゾンなどの3次元的輸送の変化を記述する理論および解析手法の確立を目指し、研究を進めている。2020年度は、ブリューワ・ドブソン循環の力学的成因を記述する停滞性擾乱の効果を含めた残差流の3次元化に着手し、投稿。第2著者になっている。本成果の概念は、等温位座標における停滞性擾乱の3次元の波束伝播の定式化の理論整備を進めるものとなる。 研究分担者の山崎は,上部成層圏を解像できる全球アンサンブル再解析データセットAFES-LETKF experimental ensemble reanalysis (ALERA)を開発し,データセットの作成を開始した. 研究分担者の菅野は,2020/21年冬季における極域寒気の変動について調査し,5回の半球スケールでの寒気の吹き出しと,対流圏上層の極渦の変動が良く対応することを確認した.また,東アジアの気候学的な寒気流出経路と大気循環場との関係を調査した成果が,2021年1月に米国気象学会の論文誌Journal of Climateに掲載された. このように、コロナ流行の悪条件のもと、本科研費参加の4名で密接な連絡を取りながら、それぞれ割り当てられた役割の中で順調に成果を上げている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の高谷は、コロナ禍において、国内に幅広い共同研究体制を構築し、対流圏・成層圏力学結合の研究に資する解析例として、2019/2020年冬季の東アジアの異常暖冬に関するメカニズムを対象に共同研究を行った。コロナ流行の深刻な状況の中、解析を進め、興味深い成果を得ることが出来た。 研究分担者の木下は、コロナ禍において米国に渡米し大気波動の3次元伝播および大気波動が駆動する物質輸送を診断する手法の開発を行ってきた。大学が閉鎖するなど決して恵まれた環境とは言えない状況の中、オンライン会議・指導教授宅にて議論するなど行い論文を書き上げ投稿した。 研究分担者の山崎は,研究協力者の野口峻祐と議論しながら,成層圏循環を解像できる再解析システムの作成に注力した.他の全球再解析との比較などを行ったため,準備に十分な時間を要した. 研究分担者の菅野は、過去40年分のデータ解析から,テレコネクションと東アジアの気候学的な寒気流の変調との関係を明らかにした.実施計画にある上記の研究に加えて,極域寒気の分布と温位面での渦位の分布との解析から,対流圏下層の寒気の分布と対流圏上層の極渦の分布を関係づけることができた.このように,当初の計画以上の成果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の高谷は、現在準備中の論文の受理を目指し、論文の執筆を行う。また、本研究をさらに発展させ、対流圏・成層圏結合の力学の解明に結びつける。さらに、対流圏・成層圏結合の理論的理解を目指し、擾乱エネルギー時間発展に関する新しい理論を完成させる。 研究者分担者の木下は、投稿した論文の受理を目指し、必要な追加解析を行う。現在進めている夏季モンスーン時期の波活動とそれに伴う物質輸送に関する解析研究の論文化に向けて解析を進める予定である。解析研究の論文化が順調に進んだ場合は、極夜ジェット変動に焦点を当てた解析を行う。 研究分担者の山崎は、完成したシステムを使って,成層圏・対流圏結合に関する研究を進める.ALERAに特有のアンサンブル摂動やその振幅(スプレッド)データと,等温位面上における解析手法で得られる波活動度との関係について力学的な調査を進める. 研究分担者の菅野は、対流圏の大気循環変動と地表付近の寒気流出との関係が明らかになったので,次年度は成層圏の大気循環変動とこれらの関係を明らかにし,成層圏-対流圏結合系の観点から寒気流出の理解を深めていく.
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