研究課題
昨年度、MIROC6をベースにした化学気候モデル(CCM、水平解像度T85(約140km))にオゾン化学を簡略化した修正チャップマン反応(Hartmann, 1978, J. Atmos. Sci.)と亜酸化窒素(N2O)を導入したが、今年度はそれに引き続きCFC-11、CFC-12、ハロン1301、ハロン1211等のオゾン層破壊物質の導入を行った。これらのオゾン層破壊物質(ODS)の分解に関わるすべての化学反応を導入することによるモデルの負荷の増大を避けるため(特にOHやClによる分解を考えるとOHやClの予測もしなければならなくなるため考慮すべき化学反応が格段に増大する)、N2Oと同様、これらのODSは光解離とO(1D)との反応だけによってのみ分解されると仮定したモデル化を進めた。モデルで計算されたオゾン層破壊物質が、対流圏上部から成層圏にかけて分解されそこで濃度が急激に減少するような鉛直分布が再現できた。以上のMIROC6をベースにしたCCM開発においては、成層圏の化学過程を扱うのに必要な化学反応をほぼフルに導入したMMIROC3.2-CCMおよびMIROC5-CCMによるオゾン分布、N2O分布、ODS分布との比較を行いながら、簡略化した化学モデルの妥当性を確認した。並行して、NICAMの成層圏拡張バージョン(top高度1hPa(~50km))に、MIROC6ベースCCMと同様に上記の簡略された化学反応を導入する作業を行った。しかしながらモデルを1年くらい安定して走らせるまでには至らなかった。したがって次年度にはその原因を取り除き、このNICAM成層圏拡張バージョンCCMの1年程度の計算を成功させ、計算された東西風、気温、オゾン、水蒸気、ODSの分布および季節変化を解析し、MIROC6-CCMによる結果との比較と考察を行う。
3: やや遅れている
令和4年度は、依然としてコロナ禍による様々な交流制限によって、研究分担者や研究協力者間の情報交換や一堂に会しての議論が困難であったことにより、数値モデルおよび数値実験設定に関する確認と修正、およびそれに関する議論、モデルの調整等に時間を要したことにより、研究の進捗は遅れ気味となった。
新型コロナ感染はかなり落ち着いてきたので、リモート会議も利用しつつ、現地集合の会議なども行い、分担者・研究協力者との意思疎通と情報交換を図り、モデルの開発と調整を進め、実験を行い、結果を解析し、考察を行う。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)
Scientific Reports
巻: 13 ページ: 320(1-12)
10.1038/s41598-023-27635-y
Journal of Atmospheric Sciences
巻: 80 ページ: 889-908
10.1175/JAS-D-22-0023.1