研究課題
二酸化炭素(CO2)は主要な温室効果ガスとして地球の気候変動を増幅させる作用があるため、過去の大気中CO2濃度の正しい制約は気候学的観点から非常に重要である。本研究では、浮遊性有孔虫のホウ素同位体指標を用いて、中新世(Miocene)後期から現在にかけての、高解像度かつ連続的な大気中CO2濃度の記録の作成を目指した。2022年度は、アルフレッドウェゲナー極地研究所に滞在し、2021年度に準備した浮遊性有孔虫試料のホウ素同位体分析を行なった。海洋研究開発機構よりも少ない試料で分析が可能であるため、有孔虫量が少ない層準を優先して分析した。しかしながら、測定されたホウ素同位体比は、想定される値とは程遠いものであった。その原因を探ったところ、通常清浄であるはずのテフロン製バイアルの汚染によることが判明し、測定結果を全て棄却することとなった。再測定に向けて、2023年度に海底堆積物コアの追加のサンプリングを高知コアセンターで行い、有孔虫の拾い出しを現在も進めている。それとは別に、海洋研究開発機構の有するクリーンルームのホウ素に関する清浄度を確認するために、テフロンバイアルを用いた暴露実験を行った。希硝酸とマンニトールを入れた容器をクリーンルーム内のクリーンドラフトおよび実験台の上で1日放置し、ホウ素のフラックスを定量した。比較のために、特に清浄でない、普通の実験室でも同様の暴露実験を行った。その結果、クリーンルームの実験台の上は、季節を問わずに常に清浄に保たれていることが分かった。以前使っていた海洋研究開発機構高知コア研究所のクリーンルーム内のホウ素フラックスは夏に高くなり、実験の妨げとなっていたが、そうした現象は確認されなかった。また、興味深いことに、最もホウ素のフラックスが大きかったのは、普通の実験室ではなく、クリーンルーム内のクリーンドラフトの中であった。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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