研究課題/領域番号 |
20H01985
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
成瀬 元 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40362438)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 逆解析 / 機械学習 / 堆積作用 / 混濁流 / 津波 / 海洋地質 |
研究実績の概要 |
本研究は,タービダイト(混濁流堆積物)を古地震指標として用いることの妥当性を検証することを目的としており,IODP航海で採取する2011年東北沖地震起源タービダイトを逆解析して,地震性混濁流の流速や濃度を復元することを目的としている.本年度は,前年度に引き続いて2次元混濁流モデルの開発を行った.基礎式としてParker et al. (1986)の4方程式モデルを採用し,数値解法としてはCCUP法を採用した.さらに,いくつかの数値粘性モデルを組み合わせたところ,多様な条件で極めて安定して計算を継続できる2次元混濁流モデルの開発に成功した.また,今年度は2次元モデルに適したニューラルネットワーク逆解析モデルの構造について検討を行った.結果として,2次元的に分布するタービダイトから混濁流の水理条件を復元するためには,畳み込みニューラルネットワークを用いることが有効であることが数値実験によって示された.さらに,本年度は予察的に2次元モデルの検証を行うための水槽実験を開始した. モデル開発に加えて,本年度は房総半島に分布する安房層群清澄層の地質調査をより本格的に行い,タービダイト単層解析のための柱状図を作成すると共に,粒度分析を行うためのサンプルを採取した. 日本海溝の津波起源タービダイトを採取する研究航海IODP Expedition 386はコロナ禍の影響で航海が延期されていたが,本年度にコアの採取および岩相記載が開始された.次年度には本航海で得られたデータをもとに逆解析モデルの構築を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は2次元モデルの開発がおおむね完了し,後はいくつかのパラメタリゼーションの妥当性を水槽実験で検証するのみとなっている.また,野外調査を開始し,すでに有望なタービダイト単層の対比とサンプル採取を終えている.これらに加えて,IODP航海による日本海溝の津波起源タービダイトの調査も開始されたため,おおむね順調に研究プロジェクトが進展しているものと判断される.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は引き続き2次元フォワードモデルの開発を続け,さらにこのモデルに基づいた逆解析をおこなう畳みこみニューラルネットワークの開発を行う予定である.また,水槽実験による2次元逆解析モデルの検証も行う.さらに,2022年度にはIODP Expedition 386のサンプリングパーティに参加し,日本海溝に堆積した津波起源タービダイトのサンプルを採取する.これらに加えて,さらに引き続き房総半島のタービダイトの単層解析を進め,タービダイトを堆積させた混濁流の水理条件を復元することを目指す.
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