研究課題/領域番号 |
20H01993
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
大坪 俊通 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (70358943)
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研究分担者 |
荒木 博志 国立天文台, RISE月惑星探査プロジェクト, 助教 (10290884)
横田 裕輔 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (30840540)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 衛星レーザ測距 / 宇宙測地学 / 光計測 / GGOS / 精密軌道決定 |
研究実績の概要 |
本研究は,容易に入手可能かつ低価格なコンポーネントにより小型の SLR(衛星レーザ測距)装置を開発・実証し,世界における SLR の位置づけにインパクトを与えようとするものである.4 年計画の 3 年目にあたる 2022 年度においては,各コンポーネントを組み合わせて1つのシステムにまで組み上げた.国立極地研究所の低温室では,架台・イベントタイマー・レーザが低温に耐えるかどうかの試験も行った.測距装置としての実験は,室内での測距試験に続き,屋外での地上ターゲット測距も成功している.現時点では衛星への測距までには至っていないが,国立極地研究所や海上保安庁などにおける組み上げ試験において衛星を正確に追尾できることまでは確認している.特に,海上保安庁下里水路観測所における試験においては,海上保安庁の SLR 装置と同時かつ同じ衛星に対してレーザを発射することができた.各コンポーネントの能力・安定度も着実に上がっており,システム全体として完成近づいている. 研究代表者・研究分担者に加え,研究協力者や関係機関の方々まで含め,Slack から Discord に移して相互の意思疎通は頻繁にとって,対面・オンラインを交えて研究の議論を重ねている.また,共同研究先である宇宙航空研究開発機構にて整備された新たな SLR 局(つくば市)の品質評価解析を実施し,予備データながら 1 cm 程度の精度でグローバル軌道決定に使えることを確認した.この解析シーケンスは本研究において開発中の SLR 装置の予備解析にも使えるものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度においては,これまで整備してきた各コンポーネントを組み合わせる作業が主となった.たとえば,望遠鏡・カメラ・検出器などの光学系と追尾のための架台を,治具を作るなどしてまずはハードウェア的に結合させ,さらにはカメラ・検出器からの出力からアライメントを行うためのシーケンスを確立し,さらにそれらすべてを制御するためのソフトウェアを開発した.ユーザが触れる部分は,ウェブブラウザから操作できるなど汎用性が高くユーザフレンドリな形にした.これまで主に使ってきた緑色のパルスレーザに加えて,赤外波長のパルスレーザを購入しその性能まで確認している.また,もっともデータ量が大きくなるイベントタイマーとの通信については,できるだけ処理が減るようなアルゴリズムを開発している.
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今後の研究の推進方策 |
4 年計画の 4 年目に当たる 2023 年度においては,全コンポーネントを組み上げた状態での試験を重点的に実施する.国立極地研究所や海上保安庁下里水路観測所へシステム一式を持ち込んでの試験を複数回実施する.各試験においては,運用を踏まえて反省点をまとめて,改良を重ねることで,効率や精度の向上を続け,低軌道の衛星への測距に臨みたい.衛星測距に成功できれば,そのデータの品質評価を実施し,測地学的なインパクトについても考察する.これまで1つの架台の上に載せてきたシステムを,たとえば送信部と受信部を分けて複数の架台に載せる形での試験も計画する.国内外での発表を積極的に行うほか,これまで開発してきた個別の要素を論文としてまとめる.また,国内の下里局・つくば局に加え,海外の SLR 局との協力を新たに模索するほか,SLR 本来の測地用途に加え,どのような新分野に本研究が応用できるかなど,今後の展開に向けて広く探索する.
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