研究課題/領域番号 |
20H01997
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
辻 健 九州大学, 工学研究院, 教授 (60455491)
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研究分担者 |
池田 達紀 九州大学, 工学研究院, 助教 (00736845)
二宮 啓 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (40849923)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地震探査 / 人工物の振動 / 地下のイメージング / 地下のモニタリング / 機械学習 / 火星の地震計データ |
研究実績の概要 |
電車線路や幹線道路、建物といった人工構造物の振動を有効に利用して、環境フレンドリーな超高密度の仮想人工震源ネットワークを構築し、高い解像度で地下のイメージングとモニタリングを行う手法の開発を試みた。 (1) イメージングとモニタリングに有効な人工振動源の特定:MeSO-netやHi-net地震計、我々が設置した地震計のデータを解析し、適当な振動を発している人工構造物を特定した。具体的には、電車、道路、建物、工事現場等からの振動を記録し、それらの周波数成分と時間安定性を調べた。その結果、電車線路、幹線道路、河川の堰からの振動は広いバンド幅を持つ周波数を有し、イメージング等に適当であることが分かった。 (2) データ解析手法の開発:表面波トモグラフィや地震波干渉法を微動データに適用し、高い空間解像度で地下のイメージングとモニタリングする手法の確立を目指した。Hi-netやMeSO-netのデータを用いて、山陰地方と関東地方全域の地質構造を3次元的に推定することに成功した。 (3) 機械学習の利用:機械学習を用いてモニタリングデータに内在する重要な信号の抽出を試みた。今年度は、道端に設置した地震計のデータから、車両の種類と台数を定量化する試験を行った。その結果、1台の地震計を利用すれば、同時に3台の異なった種類の車が走行した場合にも、機械学習は車の種別と台数を推定することができた。この手法は地下のモニタリングでも利用できる。 (4) その他:火星に設置した地震計データの解析を実施した。まず地震計で微動の特徴を捉えた結果、実体波は着陸船から遠い場所の風の影響を受けていること、表面波は着陸船周辺の風によって励起されていることが明らかとなった。また高い周波数の微動(1 Hz以上)は、探査船からの振動が卓越しており、この振動を震源に利用することで、火星内部のイメージングを行うことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナの状況悪化により、当初予定していた野外調査の一部(地震計の設置した現地調査)を実施できず、その作業を次年度(R3年度)に持ち越すこととなった。その野外調査はR3年度に実施することができ、結果が得られた。一方で、MeSO-netやHi-netのデータを利用や、火星に設置された地震計のデータに対して着陸船振動を利用した探査を実施するなど、多くの進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の検討から、適当な人工振動が利用できない場所や、解析に利用することが難しい振動が卓越している場所もあった。そのような場所でも地下のイメージングとモニタリングが実施できるように、小型の人工震源装置の開発も重要であることが分かった。
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