研究課題/領域番号 |
20H02001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
栗谷 豪 北海道大学, 理学研究院, 教授 (80397900)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カルデラ / 珪長質マグマ / マグマ溜まり / 火山岩 / U-Th放射非平衡 |
研究実績の概要 |
本研究は、国内の代表的なカルデラ火山を対象に U-Th 放射非平衡を軸とした物質科学的解析を行い、マグマが多量に蓄積されるに至った特異性の要因を実証的に明らかにすることを目的とする。初年度は、1)洞爺・屈斜路・肘折・阿蘇の4か所を対象とした試料採取および基礎的な化学分析、2)U-Th放射非平衡測定法の確立、を行う予定であった。1)については、コロナ禍のために洞爺・阿蘇についての試料採取が行えなかったことから、研究室内に保管されていた屈斜路・支笏の代表的試料を対象に全岩化学組成(主に微量元素濃度・Sr-Nd-Pb同位体比)の測定を行い、珪長質マグマの生成プロセスについての検討を行った。2)については、マルチコレクタ型質量分析計へのRPQフィルターの装着(230Thへの232Thのテーリング効果の低減)、脱溶媒システムの使用、複数の標準試料(アメリカ地質調査所のBHVO-2とW-2)を使用したデータ補正の試み、などを行った。その結果、230Th/232Th比について0.5%程度の繰り返し再現性での測定が可能になり、またモニター試料として測定したBCR-2の同位体比についても推奨値と一致していることが確認された。確立したU-Th放射非平衡分析法の有効性を確認するため、白頭山10世紀噴火の噴出物について、分析・解析を行った。その結果、主要な珪長質マグマは2万年以上前から準備されていたことなどを明らかにするに至り、確立した分析法とともに、Lithos誌に掲載されるに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍のために、当初予定していた洞爺・阿蘇での野外調査が行えなかったことから、これらのカルデラについての基礎的な化学分析やマグマプロセスの解明を行うことができなかった。しかしながら、次年度以降に試料採取を予定していた支笏について、研究室に保管されている試料をうまく活用して物質科学的解析を実施し、研究計画の大幅な遅れを食い止めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、2年目での実施を予定していた支笏の解析を1年目に回し、一方で1年目に実施できなかった洞爺・阿蘇の野外調査と解析については2年目以降に実施することになった。また2年目についてもコロナ禍のために、特に北海道外での野外調査の実施が困難になると予想されることから、比較的短時間で完了する姶良の野外調査を2年目に実施する計画である。このように、各火山を対象とした研究の実施順序は当初の計画から変更となるが、研究期間内で実施する研究内容そのものについては、大きな変更はない。
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