研究課題/領域番号 |
20H02002
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長濱 裕幸 東北大学, 理学研究科, 教授 (60237550)
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研究分担者 |
武藤 潤 東北大学, 理学研究科, 准教授 (40545787)
河野 義生 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (20452683)
丹下 慶範 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 主幹研究員 (70543164)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 亀裂伝播 / 断層ダメージ / 動的破壊 / 放射光X線 / スプリットホプキンソン圧力棒試験機 / 超高速イメージング |
研究実績の概要 |
今年度は断層破壊伝播時の高歪速度による動的粉砕その場観察手法を確立するために、歪速度100/s を超える変形を起こすことのできるスプリットホプキンソン圧力棒法試験機を作成した。この試験機はガス銃を制御することで、衝突棒の速度を制御することが可能である。2 MPa以下のガス圧において、圧力を変化することで衝突速度を詳細に制御可能である。試料に発生する応力・歪・歪速度は、マレージング鋼を用いた入力・出力棒に貼り付けた歪ゲージの信号をLabViewによる1 MHzの計測が可能である。入力・出力棒の歪データを用いて、1次元波動伝播を仮定することで、衝撃破壊時の応力歪曲線を得る。構築したシステムを用いて、過去の研究で報告のある材料および試料サイズを用いた再現実験から、本試験機の能力を評価した。無酸素銅やS45C試料を用いた実験からは、ガス圧1MPaで、3000/sを超える歪速度が得られ、過去の似たような試験機とほぼ同様の歪速度が得られることが明らかになった。直径16ミリ、高さ16ミリの花崗岩試料を用いた予察的実験から、ガス圧0.2MPaにおいて歪速度~400/sが得られ、試料は粉砕(pulverized)した。一方、ガス圧0.1 MPaでは、歪速度~300/sであり試料は外形を保っていた。X線CTを用いた圧力0.1MPaの試料の観察から、衝撃波の進行方向に平行に発達するような蜂の巣状の割れ目が見られ、過去の研究で報告されているダメージの弱い試料(multiple fragments, Aben et al., 2016JGR)に発達する亀裂パターンとも調和的であった。また、予察的結果から得られたpulverized-fragmentsの遷移が現れた歪速度(約300/s)も過去の論文で公表された条件(Doan and Gary, 2009Nature Geo)とほぼ同一であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度のスプリットホプキンソン圧力棒法試験機の導入と予察的な試験によって、本試験機の基本的性能を評価することができた。特に、ガス圧と衝突速度の詳細な関係を得ることができたため、今後の実験によって、衝突速度と岩石試料に発生するひずみ速度の定量的な関係を得ることができれば、ビームラインにおいて、詳細な力学計測を行うことなく、ガス圧の制御から試料のひずみ速度を制御することができる。
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今後の研究の推進方策 |
断層破壊伝播時の高歪速度下による変形を模擬できる唯一の方法である衝突変形試験と、放射光X線を用いた超高速度X線イメージングを組み合わせることにより、高速粉砕する試料内での亀裂のその場観察とダメージの定量評価を目指す。今後は動的粉砕時のOff-faultダメージ形成のその場観察手法を確立するために、放射光X線ビームラインでの高速衝突試験による地殻岩石の高歪速度破壊実験とその場観察法の開発を行う。そのためには、昨年度開発した試験機を縮小する改良を行う。改良した衝突棒においても、衝撃試験実験の重要な点である1次元での波動伝播条件を満たす必要があることから、ひずみゲージを用いて、入射棒の弾性波速度の測定を行い、1次元での波動伝播を満たす最短の長さを計測する。また高速カメラとの同期システムを作成し、高速カメラをつかった光学計測と力学計測を両立させる。また、動的粉砕した粉末試料の回収から、X線CT、粒径計測などを行い、ダメージの定量的評価方法を確立する。
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