研究課題/領域番号 |
20H02006
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
南 拓人 神戸大学, 理学研究科, 助教 (90756496)
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研究分担者 |
寺田 暁彦 東京工業大学, 理学院, 准教授 (00374215)
宇津木 充 京都大学, 理学研究科, 助教 (10372559)
風間 卓仁 京都大学, 理学研究科, 助教 (20700363)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 火山 / 阿蘇山 / 水蒸気噴火 / 熱水系 / 重力 |
研究実績の概要 |
火山の電磁探査に関わる研究では、2021年度は、阿蘇山でのACTIVEキャンペーン観測を引き続き実施し、データを解析するためのMT-ACTIVEのジョイントインバージョンコードの開発を精力的に進めた。分担者の宇津木を中心に、2021年の5月、6月、8月、9月にACTIVEのキャンペーン観測を実施し、2021年10月に発生した噴火前の貴重なデータが取得できた。インバージョンコードの開発では、従来からのMT法と人工電流を用いるACTIVEの両者の計算で境界条件の与え方を共通にすることで、計算コストを大きく減らす手法を考案し、コード開発を進めた。2021年度中に順計算部分の開発が終わっており、逆計算部分の開発を進めているところである。 重力観測では、2020年12月に火山研究センター本堂観測室に相対重力計LaCoste-G1016を設置したのち、重力時間変化を連続的に収録している。その結果、2021年の6月18日、10月20日、および12月27日にステップ的な重力変化が観測された。3つの期日はそれぞれ火口陥没、小規模噴火、および火山性微動の振幅増加が確認された期日と一致しており、ステップ的な重力変化は火口直下における質量変動を示唆している。 また、昨年11月の噴火後に、ドローンを使った阿蘇での調査を実施され、その際、MultiGAS観測を行った。その結果、H2O/SO2=15-19(モル比)を得ており、H2O放水量が推定できた。値は阿蘇としては典型的であり、噴火前後で大きくは変化していないことが確認できた。 以上のような火山における各種物理量を統合的に理解するため、熱水流動モデリングも同時に進めた。これまでに、火口の西に存在する観測井内の温度の深さプロファイルとモデル計算値の比較から、地下に浸透する実効降水量の値が1000mm/年程度であると拘束し、モデルの信頼性を高めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、阿蘇山でのACTIVEキャンペーン観測を複数回実施することに成功し、また、重力観測の継続と地球化学的観測も実施した。また電磁探査データ解析に用いるインバージョンコードの開発と地下熱水系のモデリングも順調に進んだ。一方で、阿蘇山は火山の活動度が高いため、計画段階で予定していたACTIVE連続観測点の設置が未だ困難である。2021年度にも10月に噴火が発生したため、連続観測点の設置は見送り、火山活動が低調な時期のキャンペーン観測の実施を継続している。 論文などによる成果はまだ公表できていないが、貴重なデータが蓄積されており、熱水系モデリングの精緻化と、研究手法となる解析コードの開発も順調に進んでいる。これらのことから最終年度に多くの成果の公表が期待できる状態となっているため、上のように評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに阿蘇山で行われてきた地球化学的観測・重力観測・ACTIVE観測のデータを統合・解析し、論文化していくことに注力していく。阿蘇山では2021年度まで、分担者の宇津木を中心に定期的にACTIVE連続観測が実施されてきており、また分担者の風間によって重力データが蓄積されてきた。また、研究代表である南がMTとACTIVEのジョイントインバージョンコードの開発を進めてきており、このデータを以前に取得されたAMTデータと合同で解析することにより、新しく阿蘇山の比抵抗構造を推定し、阿蘇山熱水系を詳細に明らかにできる。熱水系モデルについては、研究協力者のGresseが比抵抗構造をベースとした熱水系モデルをこれまでに構築しており、これも論文化につなげる予定である。他方で、これまで同様に、分担者の風間は阿蘇での重力観測を継続、分担者の寺田は阿蘇山の表層の地球化学的観測を適宜実施ていく。特に重力観測については、火山研究センター本堂観測室に別の相対重力計(Scintrex CG-3M)を設置し、2台の重力計による並行観測を実施する予定である。これにより、火山内部で質量変動現象が発生した際に、観測される重力変化の整合性を確認できると期待される。別機種の重力計を用いて重力変化の整合性が確認できた際には、2021年度に観測された3回の重力変化の要因を検討し、阿蘇火山内部の質量変動プロセスをモデル化する予定である。 以上のようなデータから阿蘇山の全体像をどのように明らかにできるかについて、今後、プロジェクト参加者全員で議論を深めていく。上記で得られた成果は、順次論文としてまとめて国際誌に投稿すると共に、国内・国際学会で発表を行うことを予定している。
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