研究実績の概要 |
火星は、測地観測や地震波観測から液体の中心核(コア)を持つことが報告されている (e.g. Irving+ 2023)。火星コア組成は、Fe-Ni-S系が有力視されるが文献により組成が異なる。地震波観測によるコアサイズを基にコア組成を制約するには、コア条件におけるFe-Ni-Sの密度と弾性(体積弾性率など)に関する情報が不可欠である。そこで本研究では、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた密度と弾性波速度の複合測定により、火星コア条件におけるFe-Ni-Sの状態方程式の決定を目指している。本研究では、試料のX線透過率から密度を求めるX線吸収法とレーザー加熱式DACを組合わせた密度測定を実施し、GHz帯域超音波の干渉から波の伝播時間を求めるGHz超音波干渉法を用い弾性波速度測定を実施した。 2023年度は、Fe-Ni-Sの端成分であるFeS, Ni試料について、24 GPa, 2230 Kまでの条件で測定し、固体と液体の密度測定に成功した。Niの固体密度は、誤差が0.8-1.8 %でX線回折密度との差が0.01-2.2 %の精度で決定できた。液体密度は1.7 %の精度で求まった。得られた密度結果から、Niの等温体積弾性率は、KT0=173 GPaと求まった。 弾性波速度測定では、8-34 GPaの圧力条件でFe試料の伝播時間を測定した。X線吸収法を用いて試料のX線透過率から試料厚みを見積もった。またラボで試料厚みを求めるためにダイヤ面間距離計を製作した。これらの結果、Fe試料のbccおよびhcp相のP波速度が求まった。GHz超音波法による測定圧力を、34 GPaまで大きく拡張できた意義は大きい。また地球型惑星内部に関する国際集会(Workshop on Interiors of planetesimals and terrestrial planets)を開催した。
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