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2021 年度 実績報告書

マントル深部由来ダイヤモンドの起源・生成場と深部流体

研究課題

研究課題/領域番号 20H02009
研究機関東北大学

研究代表者

大藤 弘明  東北大学, 理学研究科, 教授 (80403864)

研究分担者 M Satish‐Kumar  新潟大学, 自然科学系, 教授 (50313929)
鍵 裕之  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70233666)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードダイヤモンド / C-H-O流体 / 炭酸塩
研究実績の概要

本研究では,ダイヤモンド中に含まれる包有物の観察・分析と高圧実験によるアプローチを組み合わせ,未だ謎に包まれているマントル深部(サブリソスフェア)由来のダイヤモンドの起源と生成場,生成プロセスとそこにおける流体の役割りを明らかにすることを目的とする.昨年度は,ブラジル産の深部由来ダイヤモンドに含まれるサブミクロンサイズの流体包有物のTEM観察を進めたが,包有物内部に固体析出物がほとんど見られず,流体の化学的特徴までは明らかにできなかった.今後,観察対象試料を拡げ,またレーザー加工・Arイオンミリングによるより広域な研磨断面を作成し,手掛かりを見つけるとともに,ダイヤモンド内部の炭素同位体および微量元素分布を調べる.
一方,高圧実験によるアプローチでは大きな前進が得られ,C-H-O流体のソースとして用いるステアリン酸の炭素同位体組成(δ13C=~30‰)がほぼそのまま(分解によって生じる)C-H-O流体に引き継がれることを明らかにした.この結果は,炭酸塩マグネサイト(δ13C=~0‰)との固液共存系におけるダイヤモンド生成プロセスを考える上で,炭素同位体組成が有用なトレーサーとなり得ることを示すもので,本研究の目的達成へ向けての大きな一歩といえる.この成果を1月に開催された日本-ロシアの研究者が中心となって企画したオンライン国際シンポで発表し,また今夏フランスで現地開催される国際鉱物学会議(IMA2022)でも報告予定で,近く国際誌へ論文も投稿する.今年度は,これに基づき,炭酸塩-C-H-O流体共存系におけるダイヤモンド生成実験を様々な温度圧力条件で行い,ダイヤモンドの生成メカニズムを明らかにし,そこにおける炭素同位体分別挙動についても検討し,天然のマントル深部由来のダイヤモンドから得られる情報と比較考察をする.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マントル深部由来のブラジルSao Luis産のダイヤモンド中に含まれる包有物の記載分析を進めた.FIBで作成した薄膜のTEM観察では流体包有物の痕跡として負晶様の空隙(径50-100 nm)が多数含まれていることを見出した.しかし,包有物は極めて微細で内部には固体析出物は観察されず,流体組成の推定にまでは至っていない.
現在,試料の数を増やし,より広域の観察が可能なArイオンミリング断面を作成し,包有物の探索を続けている.
一方,高温高圧実験によるアプローチにおいては,炭酸塩鉱物とC-H-O還元流体共存系におけるダイヤモンドの生成メカニズムを調べるため,炭素同位体をトレーサーとして用いる検討を進めている.昨年度は,C-H-O流体のソースとして用いているステアリン酸の分解反応における炭素同位体分別について,10,17GPa,800~1600℃の圧力温度条件下で詳しく調べた.その結果,ステアリン酸の分解により生じる固相のダイヤモンドとCH4に富んだ流体の間でほとんど同位体分別は生じず,ソース物質のステアリン酸の炭素同位体組成(δ13C=~30‰)がそのままC-H-O流体に引き継がれることが明らかとなった.この事実は,炭酸塩(δ13C=~0‰)とC-H-O流体共存系において生成するダイヤモンドの炭素の起源と生成反応のメカニズムを調べる上で,炭素同位体組成が重要な指標となり得ることを示すもので,本研究の目的達成へ向けて極めて重要な前進となった.

今後の研究の推進方策

これまでの観察を通して,マントル深部起源のダイヤモンドに含まれる流体包有物の多くはサブミクロンサイズの小さいものが多く,内部の固相析出物もかなり稀であることが分かってきた.このため今後は,対象試料を増やし,レーザー加工とArイオンミリングを組合せてより広域の断面試料を作成し探索を行う.また,Nano-SIMSを用いたダイヤ試料内部における炭素同位体組成の変化と微量元素分布を追跡し,生成環境の制約につなげたいと考えている.
一方,高圧実験によるアプローチにおいては,炭酸塩マグネサイト(δ13C=~0‰)とC-H-O流体(δ13C=~30‰)共存系におけるダイヤモンド生成実験をマントル遷移層~下部マントルに相当する様々な温度圧力条件で行う.実験回収試料(ダイヤモンドおよび付随するペリクレースMgOとブルーサイトMg(OH)2)の詳細な微細組織観察とダイヤモンドの炭素同位体分析を通して,沈み込み帯深部の固液共存系におけるダイヤモンドの生成メカニズムを明らかにする.高圧実験から回収できる試料は~1mm程度とかなり小さく,その内部における反応組織やダイヤモンドの分布も微細であるため,東京大学にあるNano-SIMSを用いて高い空間分解能で炭素導体分析を行う予定である.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Diamond formation from methane hydrate under the internal conditions of giant icy planets2021

    • 著者名/発表者名
      Kadobayashi, H., Ohnishi, S., Ohfuji, H., Yamamoto, Y., Muraoka, M., Yoshida, S., Hirao, N., Kawaguchi-Imada, S., Hirai, H.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 11 ページ: 8165

    • DOI

      10.1038/s41598-021-87638-5

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Formation of polycrystalline graphite aggregates in high-pressure metamorphic rocks from the Kokchetav Massif, Northern Kazkhstan2021

    • 著者名/発表者名
      Mikailenko, D.S., Korsakov, A.V., Ohfuji, H., Rezvukhina, O.V., Pekov, I.V.
    • 雑誌名

      Doklady Earth Sciences

      巻: 497 ページ: 227-231

    • DOI

      10.1134/S1028334X21030089

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Sn-V centers in diamond activated by ultra high pressure and high temperature treatment2021

    • 著者名/発表者名
      Fukuta, R., Murakami, Y., Ohfuji, H., Shinmei, T., Irifune, T., Ishikawa, F.
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Applied Physics

      巻: 60 ページ: 035501

    • DOI

      10.35848/1347-4065/abdc31

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Plastic deformation and strengthening mechanisms of nanopolycrystalline diamond2021

    • 著者名/発表者名
      Wang, Y., Shi, F., Gasc, J., Ohfuji, H., Wen B., Yu, T., Officer T., Nishiyama, N., Shinmei, T., Irifune, T., Dung, M.
    • 雑誌名

      ACS Nano

      巻: 15 ページ: 8283-8294

    • DOI

      10.1021/acsnano.0c08737

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Carbon isotope fractionation during the formation of Diamond from Stearic acid under HP-HT condition2022

    • 著者名/発表者名
      Kawamura, H., Ohfuji, H., Satish-Kumar, M., Suzuki, A
    • 学会等名
      4th International Seminar “High-Pressure Mineralogy: Theory and Experiment”
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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