研究課題
本研究では,ダイヤモンド中に含まれる包有物の観察・分析と高圧実験によるアプローチを組み合わせ,未だ謎に包まれているマントル深部(サブリソスフェア)由来のダイヤモンドの起源と生成場,生成プロセスとそこにおける流体の役割りを明らかにすることを目的とする.最終年度となる昨年度は,特に炭酸塩とC-H-O流体共存系におけるダイヤモンド生成プロセスを検討するために,炭素同位体をトレーサーとした高圧実験と回収試料の同位体分析に注力した.前年度までの研究で,C-H-O流体のソースとして用いるステアリン酸の炭素同位体組成(δ13C=~30‰)がほぼそのままC-H-O流体に引き継がれることが分かったため,異なる炭素同位体組成を持つ炭酸塩(δ13C=-2‰)とC-H-O流体(δ13C=-28‰)を共存させた高圧実験を行い,その回収試料(ダイヤモンド)の炭素同位体組成をNanoSIMSで局所分析し,固液相互作用を介したダイヤモンド生成プロセスの解明を目指した.高圧実験より回収した極めて小さなダイヤモンド試料のNanoSIMS分析は前例がなく,試料の調整や分析に際しての校正/補正などに相当の時間と労力を費やしたが,最終的には数μmほどの微小領域におけるダイヤモンドの炭素同位体分析に成功した.分析の結果,固液反応縁中での炭素同位体(δ13C)は-20~+4‰と幅広い値を示すことが分かり,炭酸塩とC-H-O流体の相互作用により,幅広い同位体組成のダイヤモンドが生じたと解釈できる.さらに,回収試料のTEMによる微細構造観察を通して,炭酸塩の分解反応には流体中のCH4成分が関与していることを見出した.これらの結果は,沈み込み帯深部に由来するダイヤモンドの起源,成因を理解する上で大変重要な成果であり,昨夏の国際学会(IMA)および今年1月の国際オンラインセミナーにおいて報告し,現在論文にまとめている.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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