研究課題
本年度は北海道惣芦別川流域において,OAE1a~OAE1bにかけてのサンプリングを行い,炭素,オスミウム同位体比と凝灰岩のU-Pb年代測定を実施した.その結果,OAE1aについては,開始から終了までの年代が119.45Maから118.44Maとなり,従来よりも約100万年も若いことが明らかとなった.また,OAE2については,北海道苫前地域で世界で最も厚いOAE2層を発見し,各種同位体比層序や微化石,堆積物の化学組成,バイオマーカー分析を実施した.その結果,OAE2区間ではオスミウム同位体比および192-Osの含有量の変化に基づくと,7回の火成活動があることが分かった.これらのピーク時期には,湿潤化および海洋の無酸素化が起こったことも明らかにした.北海道大曲沢セクションでは、被子植物が優勢な植生が示唆されたが,OAE2層準の環境擾乱期に針葉樹の植生指標の激しい変動が記録されており、針葉樹が気候変動に鋭敏に反応したことが示唆される。特に2回目の炭素同位体比変動(2nd build-up)終盤に針葉樹の拡大がみられた。火災の頻度を示す指標からは、この層準に火災頻度の増加もみられた。つまり,OAE2時の東アジア(北海道)域では通常は被子植物が優勢であったが,OAE2の環境擾乱時期になると針葉樹林の拡大に有利となったことが推察された。一方,米国の東海岸の白亜紀の地層では,古植生・菌類バイオマーカー指標の記録から,OAE2終盤において草本優勢のサバンナ植生から針葉樹優勢の木本植生に遷移する傾向がみられた。さらにOAE2時には比較的短期間に急激な寒冷化イベントが生じており,この層準では菌類バイオマーカーの変化が敏感に現れる.このことから,急激な寒冷化による陸上生態系の衰退に対して地衣類が強い耐性を示し、陸域生態系の中で相対的に優勢になった可能性が示唆された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Communications Earth & Environment
巻: 5 ページ: -
10.1038/s43247-024-01214-z
Organic Geochemistry
巻: 188 ページ: -
10.1016/j.orggeochem.2023.104671
巻: 179 ページ: -
10.1016/j.orggeochem.2023.104588