研究課題
本研究は、海洋表層の一次生産量が高い千島・日本海溝から一次生産量が低い伊豆・小笠原海溝において海溝現場における観測調査を行い、生物地球化学および微生物群集についての知見を得ることを目的とする。このために、新規の自律型現場観測装置を開発・運用し、海溝底で有機物の無機化速度を測定すると共に、堆積物を採取して微生物群集の組成と生態系機能を検討し、生物生産の勾配と微生物による有機物の無機化との関係を明らかにする。さらに、海底に到達する有機物質の起源や、潜在的な含有が懸念される残留性有機汚染物質(persistent organic pollutants; POP’s)の濃度を測定する。調査で得られる結果は、現在課題提案者らで進行中の、西部・東部南太平洋にそれぞれ位置する貧栄養および富栄養環境下の海溝における調査結果と比較する。令和2年度は、日本海溝の調査を行うことにしていた。しかし、コロナ感染拡大に伴い、令和2年度の航海が中止されたので、研究目的を達成するために重要な3つのことを中心に行い、成果をあげた。1) ケルマディック海溝、アタカマ海溝をはじめとする過年度の海洋調査で採取した深海海溝域の試料・データの分析を進め、一部の成果は論文として公表した。(10篇)2) 海溝域の環境を再現できる加圧培養装置を新たに開発し、実験を開始した(論文1篇) 。また、超深海海溝域での調査に必要な機器類(プロファイイングランダー、セディメントランダー、セディメントトラップ係留系、精密温度係留系)を開発した。3) 令和3年度に計画している日本海溝三重会合点調査に向け、調査地点の詳細な海底地形地質情報、生物などに関する成果を整理した。また、研究に必要な機器類を購入し、実験室の整備を行った。
2: おおむね順調に進展している
コロナ禍のために、航海は延期になったが、比較対象になる他の海溝の研究が進んだ。また、過年度の資料を用いた分析を進め、論文化できたので、令和3年度以降の調査研究の比較ができるようになった。また、実験装置の開発、調査機器類の開発を進めることができ、研究に弾みがつく。
本研究は、超深海海溝域における生物学と生元素循環に注目し、海溝域がどういう役割をしているのかを明らかにすることである。 令和3年度に日本海溝中部の調査を実施し、その後、日本海溝北部、千島海溝、小笠原海溝の調査を継続して行い、基礎生産が、海溝生態系にどうう役割をしているのかを明らかにする。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 12件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 12件)
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