研究協力者から提供された現生の珪質カイメンを対象として、クリーニング法の違いによる酸素同位体比の相違を検討した。試料は沖縄トラフの池間海丘(沖縄本島南西)で実施された岩石ドレッジ(St.D6、水深1234mー1346m)で回収された現生カイメンである。D6地点から回収されたカイメン3試料の一部を分取し、①超純水での超音波洗浄のみの試料、②過酸化水素水と塩酸で化学処理した後、超純水で超音波洗浄した試料について、それぞれ高周波誘導加熱-質量分析計システムを用いて酸素同位体比を測定した。その結果、いずれの試料の酸素同位体比もほぼ同程度の値を示したことから、現生の珪質カイメンについてはクリーニング法の違いはほぼ無視できる可能性が高い。また、それらの酸素同位体比はこれまで東シナ海の表層堆積物から抽出したカイメン骨針の酸素同位体比とほぼ同様の値を示していた。一方、別途実施していた予備実験では、東シナ海の表層堆積物から回収したカイメン骨針を対象として、上述の2種類のクリーニング法による酸素同位体比の相違を検討していたが、化学処理をした後のカイメン骨針の酸素同位体比の方が系統的に大きい値を示していた。これは目視では判別できない炭酸塩質のカイメン骨針が混入している可能性を示唆している。よって、現生および堆積物中のカイメン試料の酸素同位体分析は事前に化学処理をする必要がある。
|