研究課題
当該年度は、南関東一帯に広く分布する深部地下帯水層から採取された試料を分析し、深部流体に棲息する始原的なメタン生成アーキアが、現在進行形でメタンを生成し続けていることを明らかにした。また、深部流体には多様性に富んだ微生物群集が存在していることも判明しました。近年の研究によって、海底下での地下生命圏の限界や微生物が関与するメタンサイクルに関する知見が、急速に明らかになってきました。しかし、メタンやヨウ素を産出する関東地下深部におけるアーキアの存在量やその活性など、基本的な生物地球化学的な記載情報はほとんど不明なままでした。そこで、本研究グループでは、メタン生成アーキアに特有な補酵素F430の分子レベル分析など、精密な解析を行った結果、アーキアは現在も地下深部でメタン生成をし続けていること、また地表からの炭素供給はほぼ無く、独立した環境で地下生命圏を形成していることを明らかした。補酵素F430を用いたメタン生成アーキアを解析する手法により、環境中のメタン生成ポテンシャルを高感度に評価することができ、遺伝子解析による評価と相互補完的な検証が可能になった。今後は、補酵素F430に関する分子指標性と遺伝子指標性の有用性を、幅広い環境試料に適用することで、応用研究に活かして行くことができる。本研究計画は、多様性に富んだアーキア群集に関するさらなる生態の解明や深部地下帯水層におけるカーボンサイクルの詳細な理解につながるものと期待される。
1: 当初の計画以上に進展している
前述の研究実績の概要に示した研究成果は、米国化学会誌で公表し、高い評価を受けた。また、論文公表日と同日にプレスリリースを行ったところ、国内外のメディアで大きく報道された。
多様性に富んだアーキア群集に関するさらなる生態の解明を行うため、室内での培養実験を継続して行っている。また、深部地下帯水層におけるカーボンサイクルの詳細な理解を行うため、核酸塩基分子レベルの詳細分析として、オンラインクロマトグラフィー/高分解能質量分析法による新しい方法論(=未発表内容)の開発と応用的取り組みを進めている。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 7件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (4件)
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