研究課題/領域番号 |
20H02022
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 研 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40396461)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グラフェン / ひずみ制御 / センサ / ナノリボン |
研究実績の概要 |
本研究では,高機能,高効率なグラフェンナノリボン(GNR)デバイス安定製造のための基盤技術の構築を目的に,形状及びひずみ制御によるGNR電子構造設計手法の開発を行う.特に半導体的性質を示すGNRと金属的な性質を有するGNRを電極として一体成形したダンベル型のGNR構造に着目し,幅寸法とひずみ負荷制御に基づく多様なバンドギャップ制御の可能性を検討した. 幅広部を金属伝導GNR,幅狭部を半導体GNRで構成したダンベル型GNR構造に対し,密度汎関数理論に基づく第一原理解析を用いて電流-電圧特性を検討したところ,接合界面における界面電子状態の形成により半導体GNR単体と比較して電流が流れ始めるしきい値電圧が減少することを確認した.この結果より,半導体的伝導特性を示すGNRに安定した電気的接続を形成する手法としてダンベル型構造が有効であることが示された. ダンベル形状の実用性の実証のため、櫛歯状電極間に幅30-80 nmのGNRを配置したサンプルを試作し,光電流のひずみ依存性を評価した.櫛歯状の金属電極とGNR間に安定したオーミックコンタクトが形成され,リボン幅が減少するとともに光電流は増加し,30 nm幅のダンベル型GNR構造では従来報告例の7倍以上の光誘起電流変換効率を示した.また,バンドギャップが小さく光電変換効率の低いリボン幅80 nmのGNR構造に対して電流方向と平行に約200μstrainの一軸引張ひずみを作用させたところ,光誘起電流が約30%増加することを確認した.これより,ダンベル型GNRの幅寸法と適切なひずみ負荷による多様な有効バンドギャップ制御の可能性を実証し,次世代の多機能スマートセンサ開発に適用可能であることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グラフェンナノリボンの幅寸法と適切なひずみ負荷による多様な有効バンドギャップ制御の可能性を理論,実験の両面から実証し,次世代の多機能スマートセンサ開発に適用可能であることを示すことができたため.
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今後の研究の推進方策 |
電子状態解析や電気伝導特性評価、ひずみセンサへの応用研究から,GNRの幅寸法と適切なひずみ負荷による多様な有効バンドギャップ制御の可能性を示した.一方,高性能グラフェンデバイスの実用化に貢献するためには,様々な応用分野における議論や検証を通して技術の有用性や汎用性を高める必要がある.また,技術の精度や信頼性を高めるため,応用研究に加えて,理論解析により明らかになったダンベル型GNRの電気的特性とひずみ依存性を再現性良く実証していくことも不可欠である.したがって,今後,ガスセンサ,フォトダイオードや太陽電池への適用可能性を検証していくいくとともに,理論解析の実証研究も進める.
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