研究課題
本研究では,高機能,高効率なグラフェンナノリボン(GNR)デバイス安定製造のための基盤技術の構築を目的に,形状及びひずみ制御によるGNR電子構造設計手法の開発を行う.特に半導体的性質を示すGNRと金属的な性質を有するGNRを電極として一体成形したダンベル型のGNR構造に着目し,幅寸法とひずみ負荷制御に基づく多様なバンドギャップ制御の可能性を検討した.幅広部を金属伝導GNR,幅狭部を半導体GNRで構成したダンベル型GNR構造に対し,密度汎関数理論に基づく第一原理解析を用いて電流-電圧特性を検討したところ,接合界面における界面電子状態の形成により半導体GNR単体と比較して電流が流れ始めるしきい値電圧が減少することを確認した.この結果より,半導体的伝導特性を示すGNRに安定した電気的接続を形成する手法としてダンベル型構造が有効であることが示された.また,ガスセンサへの応用を想定し,グラフェン表面におけるH2O,CO,NH3吸着特性のひずみ依存性を検討した.引張ひずみ負荷によりCO,NH3の吸着エネルギーが減少したのに対し,H2Oの吸着は安定化したことから,ひずみ負荷によるガス吸着制御の可能性が示された.解析結果の妥当性及びひずみ制御によるガスセンサの感度向上及びガス選択性への影響を検討するため,ポリジメチルシロキサン(PDMS)基板上にグラフェンデバイスを試作し,その電流‐電圧特性を評価した.水蒸気を含んだガスを試作サンプル上面に断続的に流し,その際の電気抵抗を測定したところ,水蒸気の流入に対しグラフェンシートの抵抗が増加しH2Oに対するセンサ機能が確認された.また,20%の引張りひずみをサンプルに負荷し同様の試験を行ったところ,無負荷時と比較し,電気抵抗変化率の増加と水分子脱離までの時間の短縮が確認され,ひずみ負荷によるセンサ機能向上の可能性を実験的に実証した.
2: おおむね順調に進展している
グラフェンナノリボンの幅寸法と適切なひずみ負荷による多様な有効バンドギャップ制御の可能性を実証し,次世代の多機能スマートセンサ開発に適用可能であることを示すことができたため.
電子状態解析や電気伝導特性評価、ひずみセンサへの応用研究から,グラフェンナノリボンの幅寸法と適切なひずみ負荷による多様な有効バンドギャップ制御の可能性を示した.一方,高性能グラフェンデバイスの実用化に貢献するためには,様々な応用分野における議論や検証を通して技術の有用性や汎用性を高める必要がある.また,技術の精度や信頼性を高めるため,応用研究に加えて,理論解析により明らかになったダンベル型グラフェンナノリボンの電気的特性とひずみ依存性を再現性良く実証していくことも不可欠である.したがって,今後,ガスセンサ,バイオセンサ,フォトダイオードや太陽電池への適用可能性を検証していくいくとともに,理論解析の実証研究も同時に進める.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件)
Nanomaterials
巻: 11 ページ: 1701~1701
10.3390/nano11071701
International Mechanical Engineering Congress & Exposition (IMECE 2021), Proceedings,
巻: IMECE2021 ページ: -
10.1115/IMECE2021-69917
10.1115/IMECE2021-70930