研究実績の概要 |
本研究では,高機能,高効率なグラフェンナノリボン(GNR)デバイス安定製造のための基盤技術の構築と多機能センサへの応用を目的に,形状及びひずみ制御によるGNR電子構造設計手法の開発を行った.特に半導体的性質を示すGNRと金属的な性質を有するGNRを電極として一体成形したダンベル型のGNR構造(DS-GNR)に着目し,幅寸法とひずみ負荷によるバンドギャップの多様性発現とそのセンサ応用への可能性を検証した. リボン幅の異なるDS-GNRをSi基板上に作製し,DS-GNRに接続する金属電極の材料が両端で異なる非対称電極構造デバイスの試作を行った.電極材料にPtとTiを用いて作製したサンプルに対し,光センサへの応用を想定し,疑似太陽光照射下で電流-電圧特性を評価した.その結果,リボン幅が500nmから30nmに減少するにつれて光電流が急激に増加することを確認し,30nm幅のサンプルにおいて200mW/cm2の光強度で平均0.5A/Wの感度が得られた.この急激な光電流の増加は,リボン幅減少に伴うGNRの有効バンドギャップの増加に起因すると考えられる. また,幅80nmと150nmのDS-GNRサンプルに4点曲げ試験法を適用して引張りひずみを負荷し,受光感度に及ぼすひずみの影響を検討した.幅80nmのGNRサンプルでは引張ひずみ負荷により光電流が増加し,200μεのひずみ負荷で感度が約40%向上した.光電流の変化が主としてGNRのバンドギャップ変化によるものと考えた場合,実測値より推定されたバンドギャップの変化量は約6.8 meVであり, この値は第一原理解析から得られたひずみ感度(4.8 meV/200με)と良い一致を示した。 以上の結果より,幅と負荷ひずみを制御することでGNRの実効バンドギャップを制御することが可能であり,ひずみセンサや光センサへの応用可能性を実証した.
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