研究課題/領域番号 |
20H02026
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
木村 康裕 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70803740)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 機械材料・材料力学 / 原子拡散 / エレクトロマイグレーション / インジェクション / ファインマテリアル |
研究実績の概要 |
令和2年度は、電子流によるエレクトロファインインジェクション(電子流駆動型金属微小射出)機構の確立を試みた。電子流によるエレクトロマイグレーション(以下EM)を利用した金属原子の射出が、(a)EMによる原子拡散、(b)射出箇所における原子蓄積に由来した圧力増加、(c)大気圧と内圧の圧力差を利用した原子射出、の3過程を経て実現されることに着目し、以下2項目を設定し研究を遂行することで、以下の研究実績を得た。 (I-1)耐圧機構の新規開発 EMに伴う原子蓄積が金属原子射出の駆動力たる圧力増加を引き起こすには、射出機構が破損しない耐圧性と金属原子を漏らさない気密性を有していることが求められる。射出機構は、「ノズル部」と「先端部」に2分割されており、これらを耐圧性・気密性を確保しつつ如何に接合するかが重要となる。そこでこれを実現するために、「機械締結による耐圧機構の実現」および「高接着性を有する導電性接着剤による耐圧機構の実現」の2つを並行して試行し、その有効性を検証した。結果として、前者の機械締結による耐圧機構は、金属原子射出の前段階である微細孔への充填こそ成功したものの射出には至らなかった。理由としては、耐圧機構を実現するに必須な気密性が、サブミリスケールでの機械加工の精度が及ばず、保てなかったことに由来する。一方で後者の高接着性を有する導電性接着剤による耐圧機構の実現においては、継続研究課題(若手研究)において用いていたカーボンペーストから脱却し、耐熱性、高接着性を有する新たな導電性接着剤を用いることで、金属原子の射出に成功した。 (I-2)金属線被覆による原子拡散減退の防止 (I-1)項目で導入した新たな導電性接着剤を金属線に被覆することにより、金属線が断線してもこれがバイパス回路の役割を果たすことを実証した。一方で化合物形成を防ぐバリアメタルの効果については調査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載の通り、申請時に計画した研究を遂行し、EMによるエレクトロファインインジェクション機構の確立を目指し、耐圧性・気密性を有する機構の開発、化合物形成による拡散減退の2つに着手し、機構策定への方向付けに成功した。また令和3年度より着手する射出機構によるワイヤの超長化と創製高速化を目指すために、新規装置の導入も進めており、順調に実績を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、研究計画の(II)に記載の内容を実施することで、「ファインとマクロをつなぐ」新価値創造を試みる。特に令和2年度に新規に導入した高温加熱通電観察装置による雰囲気環境の制御、マルチフィジックスシミュレーションを通じた射出機構最適化を実施することで、目的であるワイヤ超長化と創製高速化を目指す。
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