研究課題/領域番号 |
20H02028
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北條 正樹 京都大学, 工学研究科, 教授 (70252492)
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研究分担者 |
木村 正雄 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (00373746)
西川 雅章 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60512085)
松田 直樹 京都大学, 工学研究科, 助教 (90756818)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CFRP / 破壊力学特性 / メゾスケール / X線顕微鏡(CT) / イメージベイスドモデル |
研究実績の概要 |
本課題では,CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)の破壊力学特性(破壊じん性やき裂進展特性)を決定する微視的因子を解明することを目的として,放射光を用いたX線CT(SR X-CT)を用いてき裂先端損傷領域を観察するとともに,3次元画像に基づくモデル解析を併用してマクロな破壊の前駆現象である損傷領域の微視的な損傷の発生と進展の力学原理について明らかにすることを検討した. 特に,CFRPのモードIき裂進展の微視的その場観察の結果,繊維間距離が小さいときには,主に界面はく離によって鋭いき裂が進展した.繊維間距離が大きいときには,繊維/樹脂界面のはく離だけでなく,樹脂の大きな変形やき裂先端前方でのボイドの発生がみられた. この実験結果に対して,有限要素法を用いて損傷進展解析を行い,モードI負荷下でのき裂先端損傷領域における微視的破壊機構について三軸応力状態を求めることにより,力学的に検討した.そのためにまず,Higuchiらが用いた樹脂の変形・破壊挙動の静水圧応力・応力三軸度への依存性を考慮したモデル化方法を用いて,樹脂単体の変形・破壊挙動を正しく評価できることを確認した.この手法をモードIき裂進展のFEM解析に応用した結果,観察と同様に,き裂は界面のはく離が樹脂の破壊よりも先に生じることで進展した.繊維間隔の違いは,繊維軸方向の応力分布に大きな影響を与えていた.繊維間に樹脂がほとんど存在しない場合,き裂先端ごく近傍では応力三軸度も低いため,樹脂の損傷はほとんど見られず,界面はく離によりき裂が進展していると考えられた.また,樹脂層厚が大きい場合,き裂先端前方でのボイドの発生には応力三軸度と静水圧応力が影響しており,静水圧応力だけでは決まらないことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のモードIき裂進展に対して,SR X-CTを用いた破壊の前駆現象の観察と,繊維・樹脂の幾何学形状を3次元モデルで再現し,樹脂の変形・破壊特性の先端的なモデル化法を併用することにより,モードIき裂進展に対してき裂先端の損傷領域における微視的な損傷の発生・進展の力学原理について一定の理解を得ることができたため,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討では,モードIき裂進展を模擬したSR X-CT内でのその場観察実験とそのモデル化を実施してきたが,炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のマクロな破壊において重要な混合モード負荷下のき裂進展に対する破壊の前駆現象の観察とモデル化を,前年度までに確立してきた手法を応用して実施する.これにより,モードIき裂進展と混合モードき裂進展の場合について,CFRPの微視的破壊機構を支配する統一的な力学原理について検討を行う.
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