研究課題/領域番号 |
20H02033
|
研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
原 祥太郎 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (10401134)
|
研究分担者 |
鹿園 直毅 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (30345087)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 固体酸化物形燃料電池 / 焼結 / 破壊 / FIB-SEM / プロセスシミュレーション |
研究実績の概要 |
2020年度に引き続き,多孔体の破壊プロセスの予測モデルの構築に取り組んだ.2020年度基礎開発した破壊解析シミュレーターを用いて,多孔体の損傷評価と破壊シミュレーションを実施した.まず,キネティックモンテカルロ法による焼結解析コードを用いて,異なる製造条件の多孔体構造を多数生成し,シミュレーターで得られた多孔体構造に対して破壊シミュレーションを行い,多孔体製造条件と破壊特性との関係を明らかにした.また、破壊応力の空隙率依存性を求めた。 並行して,解析の妥当性検証と多孔体の破壊メカニズムの解明を目的とした基礎実験を行った.対象は,高い電子導電性とイオン導電率を併せ持つものの、熱膨張係数が大きく破壊が生じやすい空気極材料LSC(ランタンストロンチウムコバルタイト)とした。実験的に空隙率が異なる多孔質LSC材料を作製後,超微小硬度計の押し込み試験を実施し,弾性率や破壊靱性値の空隙率依存性を求めた.弾性率は空隙率が増加するにつれて減少し,空気極が使用される空隙率35%程度では,緻密時の弾性率はおよそ25%程度になることがわかった.また,破壊靭性値も,空隙率が大きいほど破壊靭性値が小さくなり,空隙率35%近くでは緻密時の35%程度となり、本傾向は解析と一致することを明らかにした. 続いて、LSC空気極とGDC電解質で構成される積層体の破壊メカニズムを明らかにするため、GDC上にLSC膜を拘束焼結した時の微細構造変化をFE-SEMで詳細に観察した.観察の結果、多孔質空気極側において、熱膨張係数差を起因として、粒界に沿った微小クラックの発生が観察された。本観察結果が、粒界において破壊が発生する解析と一致することを確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
破壊解析技術の基盤開発については,当初の予定通り,2020年度のコード開発をさらに発展させ,代表者が所有していた焼結解析コード内に組み込むことが可能となった.これにより焼結体製造条件と破壊特性との関係性を明らかにすることができており、順調に進展しているといえる。また、多孔体の破壊靭性値実験や微細構造観察についても、計算結果を定性的に検証する段階まで到達しており、おおむね順調に進展しているといえる。一方、FIB-SEMを用いた三次元的な破壊機構の解明については,コロナウイルス感染症対策の影響により,装置の使用が大きく制約されたため,当初予定に比べやや進行が遅れており,2022年度以降に加速的に進める予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度はまず,2021年度に開発した破壊解析シミュレーター基礎コードの高度化を図る.具体的には,2021年度は単材料を対象としたが,2022年度は,固体酸化物形燃料電池の燃料極を対象とし,酸化ニッケルとイットリア安定化ジルコニアからなるコンポジット材料への適用を検討する.まず,代表者が所有している離散要素法・キネティックモンテカルロ法の解析コードを用いて,異なる焼結条件のコンポジット多孔体構造を生成する.シミュレーターで得られたコンポジット多孔体構造に対し,ひずみ場を与え,破壊シミュレーションを行う.焼結条件としては,初期粒径,粒径分布,初期密度などを検討し,これらの製造条件と破壊特性との関係を明らかにする.また,破壊特性として破壊応力やワイブル係数の取得を試み,多孔体空隙率と破壊特性との関係を明らかにする. また,2022年度も引き続き,多孔体の破壊メカニズムの解明を目的とした実験を行い,提案手法の妥当性検討を行う.2022年度は,コンポジット焼結体を作成し,超微小硬度計を用いた押し込み試験を実施し,多孔質焼結体にき裂を導入する.その後,試験片断面をFIB-SEMで観察し,コンポジット多孔体内部での三次元的なき裂進展経路やメカニズムを明らかにする.ここで.FIB-SEM用の試験片作製は,研究分担者と協力しながら実施する. コンポジット材に対する妥当性検証が終了次第,上記の解析を系統だって実施し,機械学習モデルへの適用可能性を検討する.すなわち,初期焼結条件と破壊特性とを結びつけるニューラルネットワークの構築を試み,破壊特性の予測モデルの作成を行うとともに,高強度化の最適製造条件の探索を試みる.
|