本年度はまず,昨年度開発した多孔体破壊解析シミュレーターコードの高度化を図った.具体的には,本年度は,固体酸化物形燃料電池の空気極を対象とし,空気極材料ランタンストロンチウムコバルタイト材料への適用を検討した.まず,離散要素法・キネティックモンテカルロ法の解析コードを用いて,異なる焼結条件のコンポジット多孔体構造を生成した.シミュレーターで得られたコンポジット多孔体構造に対し,ひずみ場を与え,破壊シミュレーションを行った.焼結条件としては,初期粒径,粒径分布,初期密度などを検討した.これらの製造条件と破壊特性との関係を明らかにした.また,破壊特性として破壊応力を取得した.破壊特性の多孔体空隙率依存性は、べき乗則で記述され、その傾向は実験結果と一致することを明らかにした.さらに,上記の解析を系統だって実施し,微細構造断面像と機械的特性とを結びつける畳み込みニューラルネットワークを用いた機械学習モデルの基盤構築に成功した.ただし,予測精度の向上には学習データの更なる増加が必要であることがわかった.また,本年度も引き続き,多孔体の破壊メカニズムの解明を目的とした実験を行い,多孔体破壊機構の基礎解明を行った.本年度は,イットリア安定化ジルコニア焼結体を作成し,超微小硬度計を用いた押し込み試験を実施し,多孔質焼結体にき裂を導入した.その後,試験片断面をFIB-SEMで観察し,コンポジット多孔体内部での三次元的なき裂進展経路やメカニズムを明らかにした.本実験を通して,低密度試料,高密度試料ともにHalf-penny型に近い特徴をもつ Palmqvist型き裂が発生していることを明らかにした また FIB観察から得られたき裂深さを用いて破壊靭性値を見積もり,破壊靭性値が密度の増加と共に増加することを明らかにした.
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