研究課題/領域番号 |
20H02034
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
高野 直樹 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (10206782)
|
研究分担者 |
植松 美彦 岐阜大学, 工学部, 教授 (80273580)
松田 哲也 筑波大学, システム情報系, 准教授 (90345926)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 確率的FEMシミュレーション / 不確かさ / 確率的疲労寿命予測 / 3D積層造形 / 歯科補綴物 / チタン合金 / 純チタン / 造形不良 |
研究実績の概要 |
1.歯科補綴物(クラスプ)の疲労寿命: 計画的に試験本数を増やし、標準偏差を取得し、疲労寿命のばらつきを含めた確率的予測手法を開発した。異なる形状をしたクラスプに適用し、妥当性確認にも成功した。人工唾液に2週間浸漬する実験も行ったところ、純チタンでは浸漬の影響は認められなかったが、チタン合金では浸漬による疲労寿命の低下が認められた。破面観察も行い、初期欠陥の影響の考察を含め、疲労挙動を明らかにした。設計段階で疲労寿命をばらつきも含めて予測することが可能となり、品質保証に有用であるとの結論を得た。 2.幾何的精度に関する研究:(1)円孔の造形不良について、積層角度依存性を調査した結果、粉末でセルフサポートされた円孔の場合、材料の密度が高い方が円孔のゆがみは少ないことを見出した。円孔径、平板の寸法、複数の円孔の配置の影響についても調査し、提案した円孔のゆがみを記述するパラメータの有効性を確認した。積層角度をパラメータとして内挿補間が可能な計測データベースを用いた確率的FEAを実施した結果、未経験の造形角度であっても、造形前に力学的挙動を予測・評価することが可能となり、造形品の品質保証に有用であるとの結論を得た。 (2)クラスプの幾何的精度を調査すべく、造形姿勢とサポートを変えた3種類のクラスプのマイクロCT撮像と分析を行った。幾何的精度を定量的に議論できるよう、計測方法を考案した。 3.チタン合金積層造形用のサポート内ミクロ構造の等価物性値の解析: サポートの密度を決定するミクロ構造のスペーシングをストラット幅で除した正規化された設計パラメータに対する等価なヤング率、横弾性係数、熱伝導率の予測に成功した。造形不良の発生頻度が同じであれば、発生位置は等価物性値に影響を及ぼさないことがわかった。これにより、造形プロセスシミュレーションに有用な情報を提供することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度に計画したすべての研究項目において有用な成果を得ることができた。研究実績の1と2の2本の論文が採択されて印刷待ちである。研究実績1の成果については、続報にあたる1本の論文を投稿中で、さらに研究実績3の成果を纏めた1本の論文を執筆中である。研究課題名にある確率的疲労寿命予測について、ばらつきを含めた予測手法の提案と、その妥当性確認も行うことができた。研究チーム内の連携も順調であり、投稿中の論文は連名で投稿したものである。招待講演を含む学会発表も十分に行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
計画通り、歯科補綴物(クラスプ)の幾何的精度と疲労寿命予測に及ぼす影響についての研究、人工唾液浸漬の影響を調べる試験本数の追加、円孔の造形不良についての研究を次年度で完成させる。円孔の造形については、粉末のセルフサポートの概念と材料の密度との相関性が示唆される結果を得ただけでなく、周囲の部材のサポートの有無の影響がある可能性が示唆されたため、次年度に深く検討する。そのため密度が高い銅合金も加え、ヒートシンクへの確率的シミュレーションとリスク分析・品質保証の手法論の応用をはかる計画を立てた。
|